林蘊蓄斎の文画な日々
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御身

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源氏鶏太『御身』(中央公論社、一九七〇年、装幀=佐野繁次郎)。淀野隆三日記の校訂をお願いしているY氏より、佐野繁次郎装幀図録にもれている一冊を頂戴した。ありがとうございます。『spin』03をお持ちの方はぜひ比較していただきたいが、15ページの264番が初版『御身』(一九六三年)のジャケットである。それは背文字が活字。上の一九七〇年版は手書き文字。六三年版の函の背文字をそのまま流用したようだ。奥付は以下のごとし。

  昭和45年12月1日 AJBC版第1刷
  発 行 所 中央公論社
  製作頒布元 全日本ブッククラブ

全日本ブッククラブ(1969〜73)については
http://www.transart.co.jp/ttt/index02.html
それにしても色々出てくるもんです。まだまだありそう。

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昨日の続き、でもないが、加能作次郎は明治三十一年に十三歳で能登の富来高等小学校を関節炎のために退学した。その夏、伯父入江万次郎に中学へ通わせてやると誘われて京都に出て来た。伯父の家業(宿屋・薬屋で四条通にあった)を手伝ったが、頼りにしていた伯父は十七歳のときに死去。代書人の書生など職を転々としながら夜学に通った。十七歳で大阪中央郵便局の臨時通信事務員となり、文学への志しを強くしていった。

ところが父の病気のため十八歳で郷里に戻り、漁師を手伝い、また役場の臨時雇いとなった。つづいて准訓導の資格を得て柳瀬尋常小学校に就職したのが十八歳。二十歳で上京。筆耕、牛乳配達などによって自活しながら早稲田をめざした。二十二歳で高等予科に入学、片上伸の指導を受ける。二十三歳で英文科に進学。二十五歳で処女作「恭三の父」を『ホトトギス』に発表。作家となる決心ができた。

二十六歳で早稲田大学卒業、早大出版部に入り、次いで博文館に入社。『文章世界』を編集する……とこのままつづけてもキリがないが、ここで言いたいのは、同じような境遇の詩人が金沢にいたということである。それは室生犀星だ。

犀星は、実の父母は主人と女中の関係で、義理の父母が内縁で、兄姉妹がすべて貰い子という、ふしぎな家庭で育ち(生涯、この境遇をテーマとして小説や自伝を書いた)、明治三十五年、十三歳で金沢高等小学校を中退し金沢地方裁判所の給仕となった。中略。二十一歳ではじめて上京、児玉花外や北原白秋らの詩人たちと面識を得、飲酒や遊びを覚え、書物を売ることを覚えた。暮らしが立たず、金沢と東京を行き来することが重なった。

  ふるさとは遠きにありて思ふもの
  そして悲しくうたふもの

と、これは金沢で書いた詩の余りにも有名な一部分。萩原朔太郎と意気投合して雑誌を出したりしているうちにいっぱしの詩人の仲間入りをしたのだが、詩では飯が食えない。そこで小説を書くことを思い立った。大正八年に「抒情詩時代」という自伝的小品を『文章世界』に送り、首尾よく掲載されたのである。ということで、ここで加能作次郎とつながった。作次郎は大正六年に『文章世界』の編集主任になっていた。犀星の処女短篇を認めたのは作次郎である。

これに気を良くした犀星は翌月、登竜門『中央公論』に「幼年時代」を投稿した。見事、滝田樗陰の目に留まり、一気に人気作家に成り上がったのである。苦学した二人の作家の歩みの違いと交錯がなんとも興味深い。

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古書通信社が東京古書会館前のヤギビルに引っ越したそうだ(3/21)。
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by sumus_co | 2008-03-26 21:11 | 古書日録
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