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正義と微笑

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太宰治『正義と微笑』(錦城出版社、一九四二年)。

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太宰治『右大臣実朝』(増進堂、一九四六年三刷)。

この二冊については『古本屋を怒らせる方法』にも書いているが、装幀はどちらも藤田嗣治。どちらも、というか、上の「新日本文芸」叢書に共通したデザインである。下の『右大臣実朝』はそれを二色刷に変えて使っている。昭和二十一年三月発行だから、用紙も印刷もかなりボロボロ。初版は昭和十八年、錦城出版社。『正義と微笑』と同じシリーズである。じつは錦城出版社は増進堂(大阪市南区末吉橋通三丁目)の作った別会社。文芸出版を担当し、編集部は東京の永田町にあった。

「日本の古本屋」で見ると、『右大臣実朝』の十八年初版は何点も出ているが、三刷は一点だけだった。値段はむろん安いのだけれど、稀少度は三刷の方が高い。『正義と微笑』にはカバーがある。カバー付きなら万エンになるようだ。残念ながら架蔵本はカバー欠(カバーは表紙と同じデザイン)、それでもそこそこのお値段。

じつは産經新聞の大阪版に連載していた「古書さんけい堂」が三月一杯で終了する。本日、最後の原稿は『正義と微笑』にしようと思って、桜のことをいろいろ調べていた。タイミング良く、『彷書月刊』3月号が「特集・花やはな」。桜についての記事が二本あって、たいへん参考になった。

サクラという名前は「サ」と「クラ」からなっており、サはサヲトメのサ、すなわち田の神。男神だからオトメが好きなのだ(ヲトは「若い」、メは「女」)。クラは神の座。ということで、古くは、というか農耕民にとっては、サクラを見るということは、農作物の豊凶を占う儀礼であった、のだそうだ。花がたくさんついていると豊作になり、ショボいと凶作、そういう経験則があったらしい。

酒を飲んでどんちゃん騒ぐ花見は将軍吉宗のたくらみだった。ガス抜きかな。吉宗はあちこちにサクラを植えた。そのころ八重桜が作られ、以後、品種は爆発的に増えた(現在600種とも言われる)。それまでは一重のヤマザクラが四十種ほど知られていただけなのだとか。日本全国にソメイヨシノが普及したのは、明治後期に兵舎や学校にバンバン植えたため。敗戦後は軍国主義の象徴として伐採されたりもした。桜にはなんの責任もないのにねえ……。

サクラの開花の用意というのは前年の秋にはもうちゃんとできている。だから時折、小春日和にサクラが咲いたりするのだ。ということは前年の気候が翌年の開花に大きな影響力をもつのではないだろうか。杉の花粉も同じこと。

装幀の話にもどると、藤田が描いているのが何というサクラなのか同定しようとしたのだが、これぞというわけにはいかなかった。一重と八重と両方描いている、ように見える。半八重という分類もあるので、たぶんそれだろうか。色は白ではなく紅がかっている。これでかなり絞り込めるものの、決め手にはならない。まあ、何でもいいですけど。
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by sumus_co | 2008-03-09 21:51 | 古書日録
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