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ルネ・ド・フランスの祈祷書

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『図書』2月号(岩波書店)の表紙。苺に蝶、百合(?)に毛虫も珍しい。ラテン語の文言を見るともなく見ていると、左頁の一番下の行に「sumus」とある。もちろん、sumusは英語の「we are」に当るので頻繁に出てきて当然なのだが、日常、ラテン語の文章というもの自体をほとんど目にすることがないので新鮮に感じられた。

解説(宮下志朗)によればこの書物は『ルネ・ド・フランスの祈祷書』(作者不明、一五二〇年代、モデナのエステ家図書館蔵)である。ルネ・ド・フランスはルイ十二世の娘で、フェラーラ(イタリアですね)のエステ家に嫁ぐことになったときに持参したのがこの小さな祈祷書だったそうだ。

表紙はこちら「Petites Prières of Renée de France」。ただし十八世紀のスタイルで装幀されているらしい。

で、その文言、左頁下二行から右頁二行目の青い十字まではこう読める。

Benedicite, Dominus, nos et ea que sumus sumpturi benedicat dextera Christi.

祈祷書なのだから時々にこれを唱えるわけだが、ネットでいろいろ調べてみると、これは食事の前のお祈り用らしい。例えば、カナダの作家ルドルフ・ジラールの一九〇四年に刊行された『Marie Calumet』という小説の冒頭「二人の司祭」のところにこうあった。

Le menu comprenait de la soupe au chou, reste du midi,un filet de bœuf à la sauce, de la poitrine de veau aux petits pois, une gibelotte, du beurre, des concombres dans le vinaigre, des radis, du café au lait, et le dessert. Avant de commencer à manger, le curé Flavel et son ami, se tournant du côté du crucifix, firent le signe de la croix et dirent :
« Benedicite, Domine, nos et ea quae sumus sumpturi benedicat dextera Christi. »

《メニューは、キャベツのスープ(昼の残り)、牛フィレ肉とソース、グリーンピースと仔牛の胸肉の煮込、兎肉の白ワイン煮、バター、胡瓜の酢漬、蕪、カフェオレ、デザートだった。食べ始める前に司祭とその友人は十字架像に向って十字を切り、こう言った。
「主よ、恵みたまえ、云々」》

大雑把な訳なのでお許しを。un filet de bœuf à la sauceはたぶんグリルしたフィレ肉にソースがかかっているのだろう。これを知って上の左頁に見ると食事のシーンが描かれている意味が納得できる。ラテン語のつづりが多少違っているのも面白い。

ラテン語訳は手に負えないので、こちらも何かないかと探してみると、オックフォードの学生向けラテン語解説サイトに、まったく同じではないが、そのヴァリエーションが出ていた。説明によるとすでに八世紀ごろにはこれに似た祈祷文があったことが確認されているらしい。参考までにコピーしておく、逐語的に英訳されている。

ANTE PRANDIUM

Benedic, Domine, nos et dona tua,
quae de largitate tua sumus sumpturi,
et concede, ut illis salubriter nutriti
tibi debitum obsequium praestare valeamus,
per Christum Dominum nostrum.


Before meal

Bless, O Lord, us and your gifts,
which from your bounty we are about to receive,
and grant that, healthily nourished by them,
we may render you due obedience,
through Christ our Lord.

÷

岩田さま
アテネ・フランセの紫色の建物にはちょっと最初は驚きました。今、地下にはリナス・サンドイッチ・カフェ アテネフランセ店があるようですね。
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by sumus_co | 2008-03-08 21:43 | 古書日録
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