林蘊蓄斎の文画な日々
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毒もみの好きな署長さん

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『宮澤賢治全集』第四巻(十字屋書店)の巻頭の二色版。賢治の草稿「毒もみの好きな署長さん」。

このところあれこれ忙しく古本屋ものぞいていない。ブックオフの二月末までのサービス券が無駄になったのがとても腹立たしい。しかたなく駅ビル(徒歩三分)の新刊書店をぶらついた。『本の雑誌』の坪内日記を立ち読みして『日本版PLAYBOY』「この人の書斎が見たい!」もついでにチェック。思ったよりずっと力の入った特集になっていた。

書斎に関する本、写真や絵などは集めるともなく集めている、だから少々迷ったのだが、買うにはいたらなかった。いちばんの理由は人選というか書斎選の問題。吉本隆明、中平穂積あたりは案外と好きだったけどなあ、他の人たちの書斎はあんまり見たくないというか、ふつう過ぎる。それからもっと写真のクオリティを高めないと。もうひとつ、表紙が……。それにつけても先月号の黒沢表紙はラッキーだった。あれはカッコいいでしょ。

出たばかりの武藤康史『文学鶴亀』(国書刊行会)もパラパラと(ちゃんと並んでいるのだ、この本屋は前にもほめたけど、ブックファーストね)。そのあとがきに、高校一年の夏、谷崎を読んで以来、旧漢字旧仮名をつかうようになった、とあるので驚いた。一九五八年生れだよ、武藤さん。この本も前書きとあとがきは旧仮名遣いで書かれている(漢字はさすがに当用のもの)。若い編集者が理解を示してくれる時代になったそうである。そんな傾向は平野啓一郎の不思議な旧漢字小説が出たころからだろうか(?)

旧仮名遣いというと、新村出が『広辞苑』の「自序」を書くときに(一九五五年)、現代仮名づかいには反対の立場をとっていたため、新旧で表記が相違する語を一切使わずに序文を書きあげたという話を思い出す。

ただし、旧かなというのは難しい。目下、淀野隆三日記の大正末をちょうど翻刻しているのだが、三高の文科志望者でも、かなりアバウトな仮名遣いをしている。むろん日記だから書き飛ばしているせいもあろう。「い」と「ひ」と「ゐ」、「う」と「ふ」、「お」と「を」、「え」と「ゑ」と「へ」などは頻繁に使うので区別されている方だ。それでもときおり混乱がある。上の賢治の原稿では促音便の「つ」が小さく書かれている。淀野もけっこう小さく書くことが多いのだが、基本的にはすべて普通サイズの「つ」として採録している。

むろん翻刻している当人が旧かなにはまったく馴れてないので、いちいち『広辞苑』を引くしまつ(見出し語のすぐ下に小さく旧かな遣いが記されている)。武藤氏が高校生のときに旧かながカッコイイと思ったのは、さすがという他ない。

ちなみに、武藤氏から『sumus』を購読したいという葉書をもらったことがあって、ちゃんと取ってあるのだけど、それは筆ペンの馴れた手で「新かな」をもって書かれていた(今、確かめました)。
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by sumus_co | 2008-03-02 22:03 | 古書日録
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