林蘊蓄斎の文画な日々
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招かれぬ客

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森田たま『招かれぬ客』(実業之日本社、一九四一年、装幀=佐野繁次郎)。今日の昼過ぎに mixi のびわこのなまず先生が緑灰色の表紙をアップされていた。おお、これは異装本発見! またまたデータ訂正か、と思ったのだが、架蔵本をよく見てみるとパターンは同じだった。問題は表紙の色。緑灰色がはげて紫になったのではないか、という疑いもぬぐいきれない。ただ紙のテクスチャーが若干違っているような気もする。本は大量生産品ではあるが、案外と一点一点に個性というか、細かな違いがあるものである。古書になればなおさらのこと。

÷

朝日新聞に書肆アクセスの記事が出ていた。鳥取・今井書店の「地方出版文化功労賞」、一草舎出版、窪島誠一郎氏らも同じ流れで紹介されており、こういうふうに結ばれていた。文は篠崎弘。

《自分の町で本を書く人がいる。その本を出す人がいて、読者に届ける人がいる。みんな「ヤセ我慢」をしながら志を貫いている》

「ヤセ我慢」にちょっとひっかかった。今井書店の永井会長の言葉から取ったものだが、痩我慢ならしなくていいだろう。ちなみに「我慢」の本来の意味は、自分の才能をたのんで人を押しのけること。「痩」の元々のイメージは老人である。関西の某都市で駅の券売機に並んでいるとこの「痩+我慢」が実感できる。

福沢諭吉に「痩我慢の説」があって、そこで福沢は、武士の美徳、日本魂として「痩我慢」という概念を持ち出しつつ、勝海舟と榎本武揚を二人ともにバッサリ斬っている。どうもあちこち理屈が通らない文章なのだが、

《明治年間に此文字を記して、二氏を論評したる者ありと云へば、亦以て後世士人の風を維持することもあらんか、拙筆亦徒勞に非ざるなり。》

と結ばれていて、これが本音だろう。この二人、今は偉そうにしてるけど、幕臣として「痩我慢」(すなわち討ち死にすること)もできなかった奴らだぞ、俺がこう言ったのを覚えておいてくれよ。結局、諭吉が腹に据えかねるのは、二人が維新のときに示した「非・痩我慢」ではなくて、維新後に明治政府へすり寄った態度のようである。

ということで、昨年十二月に海文堂書店で開催された畠中理恵子さんと近代ナリコさんの女の子トークも『spin』03に収録されているので、こちらも乞御期待。刊行は三月上旬になる予定。
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by sumus_co | 2008-02-13 20:59 | 古書日録
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