林蘊蓄斎の文画な日々
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日本文壇史

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伊藤整『日本文壇史8日露戦争の時代』(講談社、一九六六年、装幀構成=岡本芳雄)。たまたま整理中に発見した。この第十章に国木田独歩の項がある。

《彼は作品集を出さうとしたが、中々引き受ける本屋がなかつた。近事画報社の営業主任をしてゐた山本秀雄がそれを聞いて義侠的に自分の社から出すやうにはからつてくれたが、その部数は五百にすぎなかつた。そして独歩はこの年の七月、自分の勤めてゐる近事画報社から、この「独歩集」を出版したのであつた。素朴で鋭い生の感情をとらへた彼の作品は、花袋や柳田国男などの友人の間では早くから認められてゐたが、文壇人たちはこの作品集によつてはじめて、独歩の鋭いものの見方を知り、急に注目が彼に集つた。》

黒岩女史の『編集者国木田独歩の時代』では、百八十度、見解が違っている。

《窪田空穂が『独歩集』の出版について、意外な裏話を語っていた。それによると、独歩の小説集をどこかの出版社が出すという噂を聞いて、近事画報社の営業主任が、それはまずい、社の面目にかかわるというので、急きょ近事画報社から出すことになったのだという。》

《しかし、『独歩集』の初版部数は五百部にすぎず、空穂によれば「それっきり」だった。わずか二年も経たないうちに、独歩の小説がいかにもてはやされるようになるかを考えると、何かの間違いではないか、と疑いたくなるような話である。》

空穂も近事画報社に出入りし、独歩社の社員だったからこの話の信憑性は高い。独歩社は近事画報社の権利を独歩が譲り受けて始めた出版社だが、借金も引き受けてしまったため長続きしなかった。また、民友社の『武蔵野』を再刊したいという版元があったが、民友社が即座に紙型の提供まで申し出たので、かえって二の足を踏んだ、そういう話も空穂は書き残しているらしい。《どこかの出版社》がどこか? 興味のあるところだが、ひょっとして金尾文淵堂の可能性がなくもないような……。

『日本文壇史』によれば、島崎藤村は出たばかりの『独歩集』をわざわざもう一冊取り寄せて親友の銀行員・神津猛に送っている。《是非この集は精読して下さい》と手紙に書き添えて。金尾文淵堂は藤村にもアプローチしていたし、薄田泣菫(『小天地』の編集をしているとき独歩の「牛肉と馬鈴薯」を掲載)の本も出しているから、独歩に注目しても不思議はないのだけど。

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「[書評]のメルマガ」341号に中嶋大介(BOOK ONN)氏が「リレー連載・書肆アクセスの閉店から見えてくることその3 海文堂という本屋でトークがあった」を執筆している。先日の海文堂書店での「本と女の子の本音?」レポートである。はじめに中嶋氏はアクセスを知らなかったと書いている。彼が知らないのだから関西ではやはりアクセスの知名度は低かったようだ。そのへんにも努力の余地はあったか。

また「ずっと赤字でした」という畠中さんの発言について《利益を上げることを考えなければ継続できないのではないかとぼくは思っている》というのは当然で、とくに関西の人間としてはごく自然な発想だと思う。小生もまさか最初からずっと赤字だとは思わなかった。ちょっとショックだった。ある意味、それを許してきた東京の懐の深さを示しているようにも思うのだが、それももう限界になってきたということだろうか。
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by sumus_co | 2007-12-18 21:22 | 古書日録
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