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ルナアル日記ルナアル『ルナアル日記 1904-1906』(白水社、一九四二年六版)。昭和十年から十三年にかけて七冊刊行されたうちの一冊。この巻は全体に日記というより、メモというかアフォリズム風である。 《村長としては、私はよく注意して田舎道をちやんとさせておかねばならぬ。詩人としては、手入れの悪いままにして置く方が好きだ。》 《*文学を商売とすることの嫌悪。既成の掟に従つて歪められた生活をすることの嫌悪。読者に焦点を合せてずらした真実に対する嫌悪。 *これらの覚書は私の毎日の祈りだ。》 《私の著書は私からすつかり離れてしまつたので、それらの本にとつて私は既に後世の人間みたいなものだ。で、私の極めて明瞭な批判はかうだーー自分は決してこんなものは読み返さないだらう、と。》 ルナールに関して神戸のKさんよりメールをいただいたので紹介しておく。 《岸田國士訳ルナアル『博物誌』、余白の違い。興味深く読みました。ぼくの持っているのは戦後版。38年前、今出川通りの古本屋でもとめたものです。本のうしろに、鉛筆で俳句が書かれています。かすれた文字。「池の面に襞東風吹くや人も亦」。日付は昭和26年3月16日。『博物誌』をもとめたひとのこころの襞におそうもの、それは何だったか。敗亡の風、それとも戦争の、学生なりたてのぼくには、想像もつきませんでした。 いま机の上ある『ルナアル日記』7冊。ときどき、手を伸ばしています。 さて、遅ればせながら知恩寺のこと。人盛りが苦手なので、すいているところを覗きました。 いきなり、山中智恵子さんの第二歌集『紡錘』(1963年岐阜市長森北の不動工房)。これには、わが目を疑いました。[略] 今年、砂子屋書房から『山中智恵子全歌集』が出たばかり。歌集『紡錘』のなかの「塔」は、ギルガメシュ叙情詩に想を得て書かれた連作で、現在のアフガニスタン、イラク戦争に充分通じる響きがあります。 もう今日はこれでいいと、高桐書院ものから二冊、『葡萄畑の葡萄作り』と六隅許六装訂の『ロマンチックについて』、それに、足立巻一(このひともぼくにとって忘れがたい)の詩集『石をたずねる旅』(これは三冊五百円のひとつ)をもとめ帰りました。 ソムリエさんらの足元にも及びませんが、遅れた報告です。》 山中智恵子といえば、今日配信された「[書評]のメルマガ vol.337」に真駒内石山堂店主の中野朗さんが神戸の『有限』というリトルマガジンについて書いておられる。『spin』1号のエエジャナイカに北村氏が『別冊・SANPO 平野英雄氏追悼集』をトンカ書店で入手したことを報告しているが、中野氏もそれに触れながら平野英雄を興奮気味に紹介したなかにこういうくだりがある。 《鶴見俊輔のゼミに入りたくて同志社大学に進み、若いころは竹中労の弟子を自任し、夜間高校の教師をしていたとき、24歳で入学してきた梁英子(ヤン・エイジャ)氏の文才を発掘し、『有限』の柱ともいうべき「ある朝鮮人の女の子」を創刊号から連載させたり、斎藤史、山中智恵子、塚本邦雄らの短歌を愛し、タンゴ、ジャズ、演歌、島うた、バッハ、ピンクフロイドばかりか清元まで聴いていた。教師にならなかったら、父に倣ってブラックジャーナリストになっていたとか、「僕は、どっちかというと、右翼です」と告白したりと、そうしたことを知るにつけ、偲ぶ会の女性ファンではないが「平野さんのことなら何でも知りたい」と私も思い始めてしまった。》 (この項つづく)ということなので次回が待たれる。小生は、山中智恵子については、というか短歌全般について無知なので、にわかに検索した歌を掲げるのみ。 その問ひを負へよ夕日は降(くだ)ちゆき幻日のごと青旗なびく 大虚(おほぞら)に呼びたまふとやほのめきて耳盗りのくるあかときの夢 青空の井戸よわが汲む夕あかり行く方を思へただ思へとや ÷ 昨日のパネルに下地ジェッソを塗る。この上にさらに油性の下地をほどこす。 ÷
by sumus_co
| 2007-11-14 21:00
| 古書日録
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