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博物誌

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ルナール『博物誌』(岸田国士訳、白水社、一九五一年)の戦後版。旧版は昭和十五年に四角に近い判型(19×15.5cm)で出ている。挿絵はピエール・ボナール。ヴァロットンとは違って、才気あふれる筆致である。

今、新旧の版面(はんづら)を較べてみたところ、まったく同じと言っていいようだ。新版の文字のつぶれ具合から見て、同じ紙型(しけい)を使ったのかもしれない。ところが、旧版の左右の余白はすっぱりカットしてしまった。紙の節約にはなっているが、旧版の方が明らかにゆったりと落ち着きがいい。次の図の上が新、下が旧。

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版面はほとんど同じなのだが、ここに掲げた図の次のページには一カ所だけ違いがあった。新版では「香」のところに「かほり」とルビが振ってある。旧版はもちろん「かをり」。わざわざここだけ直したわけだ。単なる間違いか、あるいは当時、新しい仮名遣いの基準でもあったのか? 他に、ルナアルはルナール、ボナアルはボナールとしてある。

『博物誌』(元版の初版は一八九六年、岸田訳は一九〇四年版による)の頃にはルナールの短文は有名になっており、注文も多かったらしい。会社を辞め、背水の陣で一八九四年に『にんじん』と『葡萄畑の葡萄作り』を刊行したときとは様子が変わっていた。『葡萄畑の葡萄作り』(岸田国士訳、高桐書院、一九四七年)がこれまた皮肉たっぷり。例えばこんなかんじ。

《ーーお前は云つた。「わたしが、君達より先に死んだら、死体は鴉に食はせてくれ」と。間もなく、お前は云つた、「死者を尊べ」と。間もなくまた、お前は云つた、「尤も、君達みんなの葬式はわたしが引き受ける」と。》(エロア対エロア)

文学者たらんとした意志の表明も印象的だ。

《一同ーーそうだ! 文学者! 文学者!
エロアーーそうだ。文学者だ。まぎれもない文学者だ。おれは死ぬまで文学者だ……。文学で死ねば本望だ。万一、おれの生命が永遠であるなら、おれは永遠に文学をやる。決して疲れるやうなことはない。どこまでも、おれは文学をやる、ほかのことはどうでもいい、日光と酒の香に酔ひながら、律儀者の渋面と嘲罵をよそに、葡萄酒桶の中で跳ね踊る葡萄作りのやうに……。おれが文学に夢中になればなるほど、おれは水平線の上で頭を持ち上げるのだ。》(文学者)

ところがじつは十年後、一九〇四年にルナールは村長になって村の生活の改善に取り組むことになる。ただしそれも長く続かず、一九一〇年、四十六歳で歿した。みんなの葬式は引き受けられなかったろう。

÷

博物誌_b0081843_2242363.jpg


絵を描くためのパネルを作る。とくにこだわりがあるわけではないが、なんとなく既製品のキャンバスでは物足りない感じなので。もちろん、安上がりということもある。

÷

ブックオフが売上げ不振で在庫を圧縮したということを書肆紅屋さんが書いておられた。頻繁に値引きセールをするなどし、または《バックヤード在庫を積極的に破棄し、26%削減した》のだという。

ちょうどこの文章を読んだのと同じころ、ある人より、ある新刊書店が夏のボーナス時期を前にしてかなりの「金融返品」をしていたという目撃談を聞いた。ストック棚が空っぽになっていたそうだ。

「金融返品」というのは、本を売って、売上を作る代わりに、取次に本を返品して、取次から代金をもらうこと。再販制と委託制によって生じる現金捻出の裏技である。タコが足を食って、また生えてくるからいいや、といってるようなものかな(ちがうか?)。

取次に返った本は版元に帰る。素直に「おかえり」とは言えないよなあ。
by sumus_co | 2007-11-13 21:46 | 古書日録
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