『和多久志』第十号(蘆田四酔荘、大正十六年一月一日)。止水芦田安一の個人雑誌。文庫サイズより少し小さいくらい。大正九年から昭和三年にかけて十一冊刊行されている。大正十五年は年末に改元となったため奥付は大正十六年のまま。すでに報告したように百万遍で第六号を見つけたので、他にもないか探してみると、日本の古本屋にこの十号が出ていた。
当日の記念写真。《折柄来阪のスタール博士は前橋通訳を同伴せられて一層盛会を呈しました》とある。人物説明はないが、スタール博士は前列少女の横(向かって左)に坐る羽織袴の老人だろう。他の顔ぶれも同定できれば面白いのだが……。
÷
塩山御大の『東京の暴れん坊』は好調な滑り出しのようで何より。昨日『記録』11月号が届いた。今月は車谷長吉の『物狂ほしけれ』(平凡社、二〇〇七年)をバッサリ、返す刀で『百鬼園先生よもやま話』(旺文社文庫、一九八七年)の座談に喰ってかかっている。
《基本的には、永井荷風と同じく戦前で終わってる人なのに(名士扱いされて浮かれてる、『阿房列車』シリーズなど、山口瞳的というか、不愉快で退屈極まりない)。戦前と戦後の落差に、座頭市となっている読者や物書きが多すぎる》
いや、この点はまったく同感。『ノラや』や『日没閉門』などを読んだときにガッカリしたのを思い出した。ただし、作家というのは傑作ばかり書くわけにはいかない。駄作も書き、名声に浮かれ、老醜をさらしてこそ一人前である(?)。
÷
本日午後、某氏と打ち合わせ。本を一冊作ろうとしているのだが、予想外の難航なり。執筆方針をイチから検討し直す。たのみますよ!
這ふ蟲をひねりつぶして指寒し