林蘊蓄斎の文画な日々
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2007年10月27日 土曜日

今日も雨。しかも颱風が通過するという。やれやれ。鴬谷を引き払って日本橋小舟町へ。地下鉄の人形町から歩いたが、そこそこ距離があった。雨に荷物。部屋に入れるのは午後三時半からだからフロントに荷物だけ預けて、三越前へ向かう。ここにも高層ビルができていた。半蔵門線に乗ると神保町はすぐだ。

靖国通り沿いはブルーシートの行列。結局、古書会館へ。やっぱりあきつ書店コーナー。昨日の混雑とは打って変わって、余裕で棚を見られるていどの人出である。夢二装幀の『人形とツマミ細工』(文化生活研究会、一九二八年)400円発見。これで充分、来た甲斐があった。

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もう少しと思ってなおも眺めていると、何と、昨日手放した三重吉がポツンとさびしそうに置かれているではないか。あのオヤジもけっきょく買わなかったか。これは運命のいたずら(?)と思って購入する。

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『彷書月刊』の編集部へ。階段からのぞくと灯りがともっていたので上がって行くと、田村編集長がポツンと座っていた。ちょうどこれから息子さんと待ち合わせて食事をする、「林さんもいっしょにどう?」というのでお伴する。神保町の地下鉄の出入口(山田書店側)で古書会館の様子などを話していると、五年生の息子さんがやってきた。田村さんの幼き日もこんなふうなのかと思われる凛々しい少年だ。すぐ近くの富士そばでコロッケそば。けっこういける。息子さんはこれからしばらくゲーセン(一誠堂のとなり)で遊んで、美学校で絵画教室なのだとか。

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食後、田村さんが「林さんの知らない、できたばっかりの店」に案内するといって連れて行ってくれたのが「ブック・ダイバー(探求者)」。知ってますよ、古本ブログ読んでる人ならだれだって。田村さんに紹介され、ご主人と女性の方に御挨拶。ここの棚は読書人のものだ。文庫にもきちんと評価がなされ、値段も内容本位に付けられているような気がする。欲を言えば表の均一にもうすこしエサが欲しいなあ(身勝手な感想です)。

店を出て西秋書店に向かう。田村さんの言うには、ダイバーのご主人に初めて名刺をもらって、その名前を見たときにビックリ仰天したそうだ。というのはご主人仙波輝之さんはその筋では有名な人だったらしい(どの筋なのかは直接訊いてみてください)。西秋書店に入るのも初めて。西秋氏の父上に御挨拶。なんとヨシケン氏がいるではないか。地下展の目録から買った品物を受け取りに来ていた。いよいよ佐野繁次郎コレクションが充実してきたね。

若西秋、ヨシケン氏とともに四人でヒナタ屋へ。すると畠中さんが原稿を書いている(『書肆アクセスという本屋があった』のあとがきか何か)。声だけかけて四人で賑やかに。和田誠の装幀本についてなど。和田さんはすべて読んでからデザインにとりかかるらしい。信じられない。いったい何千冊装幀しているか知らないけど、全部読んだとしたらすごいよ。

午後三時前に四人で東京堂書店の六階へ。坪内祐三自著を語るのトークショー。小生は石神井さんに誘われていた。月の輪さんも来るはずだったが連絡とれずとか。佐野店長さんに御挨拶。定刻、中川六平さんが簡単な挨拶をしてから坪内さん登場。『ストリートワイズ』(晶文社、一九九七年)以来十年で二十五冊の単行本を出している。同年の『シブい本』(文藝春秋)が実際は最初の本になる予定だったが、担当編集者・萬玉邦夫氏の性格を慮って、中川六平氏担当の『ストリートワイズ』が先になるように調整したのだとか。谷沢永一氏との編集者をめぐるやりとりも面白いというか、論壇に独特の風土を感じさせるもの。結局は、自著を語るというよりも、担当編集者を語るというふうになっていた。『月刊Asahi』や『ノーサイド』のリニューアルで成功した話も興味深い。前者は当時の朝日新聞社の資料室や屋上のプレハブでの自由な仕事ぶり(今ではもう不可能な)、後者は文藝春秋社での、花田編集長のもと華々しく創刊した『マルコポーロ』編集部に隣接して、編集長の細井さんと二人でシコシコ『ノーサイド』を作っていた話。発売してみると『ノーサイド』はあっという間に完売するほどだったことなど、出版史の一コマとして鮮やかな光景と思う。たしかに当時(一九九四年八月〜)の『ノーサイド』は本好きにはたまらないものだった。『ARE』の同人たち、岡崎氏や山本氏が「坪内祐三って何者だ!」と騒いでいた頃である。その他、最後に書肆アクセス閉店について一言あった。坪内氏はアクセスでかなり本を買っているそうで、本を買うことが本屋を救う道だ、というしごく当たり前の、しかしあんがい難しい提言。また、閉店前に追悼集を企画するというのは筋違いだ、とみずのわ出版の柳原氏と同じことを言っていた。

終了後、サイン会があったので、その間に中川、石神井、田村さんとアクセスへ。『HB』の橋本氏が来合わせたので畠中さんが紹介してくれる。『HB』創刊号を買い、トークの打ち上げがある八羽(はっぱ)へ向かう。書肆アクセスの看板も見納めだ。

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八羽には坪内さんの教え子ですでに編集者になっている人たちや院生の人たちが集まっていた。『ぴあ』の安藤さんもいた。ほとんど中川さんの独壇場で爆笑の連続。坪内さんに「書き下ろしやんなきゃだめだよ」とひつこく食い下がっていた。これがまたギャグのキメゼリフのようになって可笑しい。九時前にお開きに。めったにない機会なので、その後もみなさんの後に従って、けっこう遅い時間になってからホテルに戻った。永い一日だった。
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by sumus_co | 2007-10-30 18:07 | 東京アレコレ日記
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