『島尾敏雄集』(影書房、二〇〇七年)、「戦後文学エッセイ選10」。影書房は未来社の編集者だった松本昌次氏が創立した出版社である。『サンパン』でもインタビュー記事が出ていたが、花田清輝の『アヴァンギャルド芸術』を二十五歳で担当したという伝説の人物。
島尾敏雄は『死の棘』があまりに強烈だったので、かえって他の作品を読もうという気持ちにならなかった作家。かろうじて『日の移ろい』を読んだが、これはこれでたいへん面白かった。本書に収録されている「妻への祈り」が『死の棘』のプロトタイプのようで、読み始めるとやはり緊迫した描写に引き込まれた。精神病院での妻のこういうセリフがある。
《「いえ、私は電気はしません。電気ショックがどんなものか知っています。私は電気ショックは絶対いやです》
すぐにアントナン・アルトーを思い出した。正式には「電気けいれん療法(electroconvulsive therapy:ECT)」と呼ぶそうで、うつ病や統合失調症などの治療として行われており、安全で治療効果の高い治療法として、確立されているという(朝青龍もやればよかったのに)。ただし今もって何故有効なのかは分かっていないそうだが。詳しくは「
電気ショック療法」参照。
それにしても上の島尾ファミリーの口絵写真はいい。敏雄・ミホ夫妻、伸三・マヤ兄妹。ちょうどタイミングよく先日の『朝日新聞』(10/7)に伸三氏の娘しまおまほさんが出ていたし、島尾伸三氏には写真集
『まほちゃん』があるのでなおさら感慨深い。
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聖智文庫さんよりホームページを更新しましたという知らせがあった。のぞいてみると、
GALLERYと
買い取りのページに楽しい写真がたくさんアップされていた。
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郷里(讃岐)より
すだちが一箱届く。田舎家の裏庭にすだちの樹があるのだ。柑橘類には棘が多くて、果実を取っているとチクチクと刺さってくるので要注意。香りも酸味もスダチがイチバン。なお隣県の徳島がスダチの本場で、徳島産の市場占有率はほぼ100%だとのこと。
酢橘(すだち)果の緑深くて棘を抜く