『彷書月刊』10月号、「特集・本」の虫より、書斎の内田魯庵。『エンサイクロペディア・ブリタニカ』が背後に並ぶ。屏風は「おらんだ正月」。内田絢子さん、堀内路子さん、という魯庵のお孫さん方より河内紀さんが遺品などを見せてもらって、ひとりで楽しんでおられる(うらやましい)。この外も今月号は本についての本の話ばかりで読みどころたっぷり(小生も寄稿してます)。
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『scripta』(紀伊國屋書店)5号が届く。内堀さんの連載「予感の本棚」に目を通す。
《昔も今も小さな出版社に対して大手取次店は薄情だったようで、そんな中で紀伊國屋はこうした出版物を委託で引き受けていたという。たとえば、当初は「書店へ配本は致しません」と言っていた江川書房も、ほどなく十軒ほどの特約販売店を月報で告知するが、その中に新宿と銀座の紀伊國屋書店の名前がある。
いつにしても、時代の尖端は小さいものたちによって告げられるものだ。そうしたものが集まる書店には、それこそ濃縮したような時代の空気が満ちることになる》
これが今なら書肆アクセスだということになろう。さらに芝書店の芝隆一に十五年ほど前に連絡を取ったと書いてある。一九九二年ということになるが、いったい芝は何歳だったのか。内堀さんは、芝の体調がすぐれないということで、会うことはできず、娘さんに質問事項を託する。
《思いがけず芝隆一本人からの返事が届いた。
「海軍大学の前で本屋をやっていたが、もう何も覚えていない」、消え入るような筆跡でそう書かれていただけだった。
やはり、本だけが遺るということか。》
その通りだろう。
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辵展(チャクテン)」(
ギャラリー象鯨、10月4日〜9日)のご案内をいただく。篆刻家・水野恵師の社中展である。その封筒に送り主の川浪春香さんの作品が貼付してあった。見事。「児不嫌母醜」。
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文旦をまふたつにする今日の月