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昔日の客

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関口良雄『昔日の客』(三茶書房、一九七八年)。某氏のご好意によってようやく入手することができた。感謝感激。星の数ほど(そんなにはないか)ある古本エッセイのなかでも、これほど純粋で、古本への愛、人への愛に満ちた本は他にないと思う。愛があるから哀しみもある。

関口良雄は大森で古本屋を経営していた。主に文芸書を扱い、文士とのつき合いもあり、『風報』『銅鑼』といったクロウトたちの同人雑誌などに軽妙なエッセイを発表した。還暦の記念としてそれらを集めて一冊にまとめたのがこの本である。ただ、関口は本の完成を見ることなく他界した。

関口は東京にゴロゴロしているビルを見て、このビルひとつ作る金があれば、今日まで約百年間に刊行された文学書のめぼしいものはほとんど集めることができるだろう、と夢想する。

《今年の夏はものすごく暑く夏枯れもひどかつた。私はこんな空想に思ひを馳せ乍ら、ウトウトしてゐた午睡の夢を破られた。近代文学館の理事である紅野、保昌先生が陣頭に立ち、本を買ひに来られたのである。三十五、六度といふうだるやうな暑さの中で凡そ三時間近くも古い時代の本が次から次へと棚から下されて行つた》《先生方の顔は古本の埃と流れ出る汗でクシャクシャになり、額からはポタリポタリと玉の汗が落ちた。積み重ねた古本の上にも落ちて染を作つた。》

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頂戴したと言えば、『初版本』(人魚書房、二〇〇七年)というウルトラ古書マニア雑誌を某氏よりいただいた。主宰者が、署名本コレクターとして、また漱石研究家として知られた川島幸希氏、編集協力が扶桑書房の東原武文氏だけにその内容の深淵なることマリアナ海溝のごとし、である。

一番興味を魅かれたのは椎の木社について書かれている征矢哲郎氏の論考、書影、リスト。征矢氏は七十冊の刊行リストのうち未見は三冊だけというから、さすがと唸るしかない。日本のこういったプライヴェート・プレスには独特のアクの強さがあってセンスに乏しいところが多いのだが、椎の木社はどれをとってもきわめて見事なデザインだと思う。

÷

朝九時ごろから家の周囲のアスファルトを剥がし始めて、ゴリゴリ、ガンガン、ドドドドド、キュイーン、キュイーン、バリバリバリバリ……とある種の拷問のような有り様だった。昼休みもなくぶっ通しで夕方四時頃まで続いたので、すっかり参ってしまった。夕方、見てみると、道路は元通り、いったい何をしたのか、一言の説明もなかったので、分からないまま。小生がカフカなら短篇の傑作をひとつ書けるかも知れない。

剥ぎに剥ぐ聾俗の身に秋立つ日
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by sumus_co | 2007-08-08 20:58 | 古書日録
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