林蘊蓄斎の文画な日々
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評伝ジャン・コクトー

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ジャン=ジャック・キム、エリザベス・スプリッジ、アンリ・ベアール『評伝ジャン・コクトー』(秋山和夫訳、筑摩書房、一九九五年)。

一週間ほど帰郷していた。いろいろな面で高齢社会を実感する日々だった。とくに、帰郷直後、引越前に送っておいた荷物を整理して納屋へ移動させていたときのこと、上体だけで重いダンボール箱をヒョイと持ち上げたとたん、グキッ、「痛たたたた」……そのまま数日間横になっていなければならないという事態を招いてしまった。肉体の衰えだけはどうしようもない。

しかたがないので、横になってひたすら読んでいたのがこのコクトーの評伝。450頁以上ある。ギックリ腰でもなければ、とうてい読めなかった。興味の中心はもちろん、以前この日録でも取り上げた「Editions de la Sirene」(人魚書房)だったが、それについては

《一九一八年の春、コクトーはブレーズ・サンドラール、ジャック・ラフィットと人魚書房を設立した。以後数年にわたり、ここから彼らおよび彼らの友人たちの作品が出版される》

このくらいのことしか書いてなかった。ただ他にモーリス・サックスのキャトル・シュマン書店、ポール・モリィヤンのモリィヤン書店、ジェラール・ヴォルムのロシェ書店など、コクトーが関係した書店・出版・画廊の複合体(かつての紀伊國屋書店がそうだったような)の存在についてわずかだが知ることができたので善しとする。

ということで古本屋にも行けず、いや、なんとかのぞくにはのぞいたが、長時間の滞在には耐えられず、とくに収穫はなし。一冊だけ、今年、講談社文芸文庫に入った、田村隆一『若い荒地』(思潮社、一九六八年、装幀=栃折久美子)を入手できたのは有益だった。これもすぐに寝読で読了。中桐雅夫と鮎川信夫、とくに鮎川の戦時下の活躍が当時の同人雑誌『LUNA』『LE BAL』『詩集』の引用等によってうまく描かれている。荒地グループの位置取りがよく分かった。たとえばこんな一節(鮎川の日記より)。

《太宰とか堀とかの低脳な美しさに酔っている幼稚な文学青年が多いなかで云々》

辛辣だが、あながち的外れでもないように思う。
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by sumus_co | 2007-07-29 17:21 | 古書日録
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