『アルトー後期集成III』(鈴木創士・荒井潔・佐々木泰幸訳、河出書房新社、二〇〇七年、装丁・AD=ミルキィ・イソベ)。「アルトー・モモのほんとうの話」「アンドレ・ブルトンへの手紙」「カイエ1945」「カイエ1947」「カイエ1948」の諸編が収録されている。
「アルトー・モモのほんとうの話」は一九四七年一月十三日月曜日に
ヴィュー・コロンビエ座で行われた講演のための原稿である。実際にこのような内容の話をしたのかどうかは分からないらしいが、当夜はジッド、ブルトンを初め、ポーラン、カミュ、サルトル、ピカソ、ドラン、ミショーなどなど新旧のオールスターがそのあまり広くない会場に勢揃いした。テクストそのものは散文詩のようなもので、たしかに非凡にも思えるにせよ、間違いなく、これを語るアルトーという存在には鬼気迫るものがあったに違いない。その講演の様子を報告したジッドらによる記事も収録されており、そちらはまたすこぶる興味深い内容である。
なおヴィュー・コロンビエ座はNRFの重役であり、評論家、演出家だったジャック・コポーが尽力して一九一三年に開場した劇場。岸田国士は一九二〇年にここでコポーやルイ・ジューヴェらと親しくつき合い最新の演劇を学んだ。一九三七年、岸田は久保田万太郎、獅子文六らと文学座を結成することになる。
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直接、関係はないけど、昨夜見た「情熱大陸」の
森山開次がヴェネチアで踊ったシーンを上のアルトーの講演会と重ねてしまった。なかなか強烈な印象であった。で、次回はいよいよ内澤旬子の巻だー!
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本日はお習字の日。今度の本のタイトルを筆文字でという依頼が担当の編集者S氏よりあったため。表紙に使うとなると、いろいろ邪念が入って(判型や背の巾を考えて)しまい、ただでさえ伸びない筆がいっそう伸びない。中川一政はとくに好きというほどでもないが、『裸の字』(中公文庫、一九九〇年)を取り出して「へたくそだなぁ」などと眺めたりした。