林蘊蓄斎の文画な日々
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彼岸過迄

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岩波文庫創刊80周年記念『図書』697号、私の三冊。232通の解答が載っているそうだ。目次を見て、直接会ったことのある人を数えると八人だった。多くの人に挙げられたタイトル、上位六冊は以下の通り。

・きけわだつみのこえ 18
・吾輩は猫である 8
・忘れられた日本人 8
・種の起原 7
・銀の匙 6
・プロテスタンティズムと資本主義の精神 6

依頼はないけど勝手にアンケートに答えてみる。
・陶淵明集
神戸の地震のとき、避難中もずっと鞄に入れていた一冊。『陶淵明全集』ではない。
・蕪村書簡集
江戸時代の手紙の面白さを教えてくれた一冊。初めて読み通したときは嬉しかった。最近読み返したのだが、そう面白くもない。でも印象に残る。
・彼岸過迄(上の写真)
これまでもっとも数多く絵に描いた岩波文庫。このテープ跡がなんとも言えない。河原町通の大学堂書店の店頭に輪ゴムをかけられて(というのは背が割れているため)、それでも100円(!)で売られていた。感動ものだった。

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以前も書いた八月十五日の放送について。四月二日の朝日新聞に「それぞれの8.15(1)」という記事があって、そのなかに朝日新聞出版局で「大陸画報」の編集担当だった那谷敏郎の例が挙っていた。東京本社の七階講堂に従業員が集まった。

《天皇の声が流れる。/「朕深く世界の大勢と帝国の現状とを鑑み非常の措置を以て時局を収拾せむと欲し……」/すすり泣きの声が響いた。》

だからー、ここまで聞いて泣き出すのは非国民だっちゅーの。泣くようなことは何も言っていないし。新聞社だから事前にポツダム宣言受諾を知っていたと考えるなら別だが、この言語も音声も不明瞭な玉音で泣き出すのは余程の人物である。

この降服に関しては『VIKING』674号に悲惨な話が載っていた。中川芳子「蚊張吊り草(二)」に夫が中国で迎えた敗戦の様子が淡々と語られている。夫・村山の軍隊は中共軍に囲まれて完全に孤立していた。

《そのまま、八月十五日を過ぎても敗戦したとの知らせも受けられなかった》《包囲の中共軍からの降伏の勧告はいよいよ激しく、それには日本の敗戦を報じていたが、隊長は、敵の謀略とばかりに一蹴し、その真偽を確かめようともしなかった》《八月十五日の敗戦から一ヶ月半、縣城の上空に、日の丸をつけた飛行機が一機飛来した。城内は歓声を上げ旗を振るなどしたが、通信筒を一つ落し寂しそうに去っていった》

そこには敗戦により戦争が終結したのですみやかに原隊に復帰し武装解除に服せと書いてあったが、若い隊長はこれを無視して徹底抗戦を主張、兵隊たちは半信半疑で意見も出ないところに村山が「こんなところで玉砕してどうなる」と声をあげた……。隊長は自決。兵隊たちは必死の脱出を計るが、ほとんどの者は助からなかった。村山は幸運にも逃げ出すことができたという。やりきれない話である。

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郵便を三日出さぬ間花八分
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by sumus_co | 2007-04-03 21:50 | 古書日録
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