文林堂書店/岸田国士『ふらんすの芝居』(三笠文庫、一九五三年)
都丸書店/中村光夫『フロオベルとモオパッサン』(筑摩書房、一九四九年三版)
H.MAUER/『Französisch゠Deutsches und Deutsch゠Französisches Tastchen‐Wörterbuch』(Philipp Reclam jun, )
それぞれの古書店レッテル。都丸書店は阿佐ヶ谷に住んでいた頃、よく通ったので懐かしい。赤いドイツ語はレクラムの『仏独・独仏ポケット辞書』に貼られているが、H.MAUER、書籍・美術商店とある。場所は Greifswald、ドイツの北東部になるようだ。
この『仏独・独仏ポケット辞書』には書き込みがたくさんあって面白い。以前にも紹介したかも知れないが、もう一度。
《本書ハ昭和十七年中、無策快心ノ掘出物也 専門店ナラザル道頓堀ノ一古本屋ニテ余リ、高カラザル価ニテ求ム》
この文章を書いたのは《松本蔵書》という印章を押したのと同じ人物だろう。書き方で分かる。他に《Kiichi Tanaka OSAKA, JAPAN》というエンボス(空押し)があるのが珍しい。またゴムの名前印で《谷藤悃》とあって、さらに名前は読めないのだが、裏見返しに《……蔵》というシールまで貼ってある。書物は流転する、ですか……。
そうそう『彷書月刊』4月号の特集が明治・大正の辞書辞典だ。先日上京する新幹線の中で斜め向いの席で中日新聞を読んでいる人がいたが、そこに「
英和対訳袖珍辞書」の草稿や校正原稿が、古書市で発見されたとカラー写真で報道されていたのが目についた。共同通信の配信記事だろうと思って調べると以下のような内容。
《1862(文久2)年に幕府の命で編さんされた日本初の本格的な英和辞書「英和対訳袖珍辞書」の草稿や校正原稿が、古書市で発見された。これまで存在が知られておらず、幕末のペリー来航時に通詞を務めた堀達之助らによって英和辞書が成立する過程を解明する貴重な資料となりそうだ。高崎市の古書店「名雲書店」の名雲純一さんが古書市で出されていたのを見つけ、堀の子孫で日本英学史学会の堀孝彦・名古屋学院大名誉教授らが本物と確認した。手書き原稿約20枚は、和紙の左側に横書きの英語、その右側に意味が対応する日本語が縦書きで書かれていた。朱で校正され、「森」など担当者らしい名前が記されている。》
名雲書店さんは友愛書房で修業されたとある人から聞いた。友愛書房さんがかつてはこのジャンルのリーダーだったそうだ。その後継者となったのが名雲書店さんだという。
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渡辺竜王と「ボナンザ」の棋譜が『週刊将棋』3月28日号に載っていた。ボナンザは予想以上に強い。しかしそれを上回る渡辺竜王の強さだ。ボナンザが見落とした手を竜王はかなり前から読んでいたという。この直観的な判断力ではまだプロ棋士の方が上手のようだが、アマでこのボナンザ(市販のものではない、チューンナップ・モデル)に勝てる人はそう多くないだろう。