林蘊蓄斎の文画な日々
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何者の喰ひ破りたる隙間風

必要があって九年間ほど敷きっぱなしにしていたキリムを移動させようとした。一部分を小型の書類ケースの下に敷き込んでいた。そのケースを少し浮かしてキリムを引っ張り出そうとしても動かない。おや? しかたないのでケースを横へ取りのけてびっくり。敷き込んでいた部分だけキリムがボロボロになっているではないか。カビのようなものが生えて色は落ち、破れ目ができてちぎれそうになっている。

やや力を込めてバリッバリッとキリムを剥がしたら、もう一度びっくり。下の畳が丸く腐っていた。特に雨漏りのする場所ではない。床下から湿気がきたのか、何か他に原因があったのか。茸めいた匂いがした。サルマタケは生えていなかったけどね。

÷

芦屋で買った佐野繁次郎の装幀本、織田昭子『マダム』(三笠書房、一九五六年)をアップした(カテゴリー欄参照)。他に井上友一郎『受胎』(新文芸社、一九四七年)も。織田昭子は織田作之助と二度結婚したという女性。最期を看取った。しかし織田作は死の間際まで最初の恋女房一枝を思い続けていた。

《一枝さんは、死後も完全に織田を支配していた。美の標準も、女の叡智も、いじらしさも、すべて一枝さんを通して、無意識のうちに計算されていたのだ。たしかにそら恐ろしい愛情で、抜きさしならぬちぎりで、一枝さんの話の出ぬ日はないというとり憑かれようだつた。》

全体にはやや大味だが、歯切れのいい文章を書く女性である。織田作没後、林芙美子と暮らしていたことでも知られているが、彼女自身が描く林芙美子も興味深い。また、敗戦直後の道頓堀の描写には驚かされる、というか映画みたいだ。

《夜更け、道頓堀橋の上でピストルの音が聞え、焼けビルの地下ではルーレットが行われていた。/パン、パン、ピューッなどという音には無感覚になつて、四辻から飛び出してきた男が、抜く手も見せず、パンとピストルを撃ち、撃たれた男が胸をおさえたまま太左衛門橋の上まで来て、血まみれて倒れたりした。》

優勝ダイブの名所も暗黒街の様相を見せた時代があった。

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比留間さま
大田黒の主著は『歌劇大観』ですね。音楽と文学社から一九一七年、増補改訂版が第一書房から一九二五年に、そして戦後、音楽之友社からも一九五一年に出ています。妹尾はその『歌劇大観』の初版刊行直後「世界中を鉄の靴で探してもこんな良書はありません」と絶賛したそうです。鉄の靴って、金(かね)のわらじということでしょうか。
となりの芝生は青く見えるというのが人間の習い性と思います。
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by sumus_co | 2006-12-11 21:51 | 古書日録
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