林蘊蓄斎の文画な日々
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からからと鼠走らすしはす哉

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口笛文庫さんの三箱から買った『文芸』第十一号(河出書房、一九四五年十二月)200円。大田博士追悼号。大田正雄(木下杢太郎)は昭和二十年十月十五日に没した。編集長は野田宇太郎。「後記」に《私は思ふところあり此号を最後に文芸の編輯を辞す事にした》とある。

ここにまた日夏耿之介の追悼文「木下杢太郎君の回想」が掲載されているので紹介したい。木下の詩文にはスバル創刊時から注目していた。だが、一般には地味なものでペダントリイとして受け取られ評価が低かった。とくに早稲田の自然派文士から嫌われ、大田もまた早稲田を嫌った。

《恐らく親しく同君と交誼をつづけた茗荷畑出身の者は予一人だけであつたであろう》

茗荷畑出身……早稲田出身ですか、なるほど。そして大正十年から『中央公論』誌上で連載した《予の詩史》で日夏が杢太郎を取り上げて以来《同君の詩集食後の唄が、詩歌愛好家と愛書家の為に異常に敬重され珍玩され初めた》、さらに《木下君の大冊の詩集が某書肆から出た時も、予がそれを商估に勧めたのであつた》などと書いている。

で、たしか日夏の『詩壇の散歩』(新詩壇社、一九二四年、上の写真の開いてある本)を所持していたと思って探すと、「木下杢太郎氏の詩集『食後の唄』を読む」(初出『早稲田文学』大正九年三月)という一文が収録されており《下らない駄小説が月評家によつて洗つたり濯がれたりする今の文壇に、著者の詩品は市価を超絶して夙く出刊されていゝものと思ふ》としてあった。とくに日夏の好むのは「緑金暮春調」などの未刊詩集だそうだ。上述《木下君の大冊の詩集》というのは『木下杢太郎詩集』(第一書房、一九三〇年)であろうが、そこにそれらは収められている。

緑金暮春調

ゆるやかに、薄暮(くれがた)のほの白き大水盤に
さららめく、きららめく、暮春(ゆくはる)の鬱憂(めらんこりあ)よ。
その律(しらべ)やや濁り、緑金の水沫かをれば、
今日もまたいと重くうち湿り、空気淀みぬ。

おぼろかに暈(ひがさ)して落日(いりひ)いま薄黄にけぶり、
青銅の怪魚(けぎょ)の像、蒼白う鱗かヾやく

恋の子ら手を翳(かざ)し、わりなしや、木の間をすきて、
大空ににじみゆく悲哀(かなしみ)の淡藍色(みずいろ)ながめ、
すずろにも胸いだき涙する時しもあれや、
ひそに、さと、あな少時(しばし)、窓もるる二部唱(ブゑっと)の声……

「古き世の、古き世の愁ゆゑ絃(いと)しみだるる、」
「さば星の影明かる彼の島に、してえるの島に
わが小舟よせなむに、などてさは歎(なげか)ふ − と答ふ。」
「この舟の、この弦の、この恋の朽ちなば − と答ふ。」

花ちりつ、花ちりつ、灯に揺れて花ちりちりつ。
ともすれば深みゆく心の沈黙(もだし)うち擾(みだ)し、
わかき日の薄暮(くれがた)の竪笛(おおぼえ)は泣きこそさぐれ、
石楠花(しゃくなげ)の葉も垂れて、ああつひに怨恨(うらみ)も暮るる。

かっしかっしむらむらぱっと「時」の足、恋慕、なげかひ、
歌、小唄、楽譜の精靈(たま)ら黒みゆく丘に逃げかふ。

ああ暮春、この堂の錆びし扉(と)は音なく鎖(さ)され、
西の空漸〃(やや)明かり、濃き空気おぼめきたるを、
ただひとり今もなほ、ゆるやかに、さはれ悲しく
さららめく、きららめく、ほの青き鬱憂(めらんこりあ)よ。

なお、『詩壇の散歩』にはうわさの「当世の艶隠者」という文章もあって、それは佐藤春夫が紀州に隠棲したことに対して用いられている。その文中に堀口大学と春夫と三人で詩を大いに語ったとき《大学は頑固に文語詩を斥け、佐藤はあつさりと口語詩を排し、自分は両方とも使用してかまはぬといふ主張者であつた》、ところが春夫はサンマの唄など口語的な詩を作ってそれらが皆良かった、としてあるのも面白い。

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「夜と古本」に参加しておられる古本ユニットriccaのサイトゆきのうえがオシャレでうつくしい。検印コレクションのページもある。

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小野さま
ほんとに手早くて上手な先生でした。まったく痛くなかったです。いつもはそこの院長先生にかかっているのですが、その日はたまたま不在で、ナベツマの主治医であるナンバーワン先生にお願いしたのでした。この歯科医院には二十近くの診療椅子があってたくさんの先生がいます。待ち時間はほとんどなく、診療も手早いものです。

芦屋浜のあたりが、松林やあのような農家ばかりだった、白洲次郎のお父さんの大邸宅もあったんでしたっけ、というのは夢のような時代ですね!

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岩田さま
こういう広告です。奥成様によろしくお伝えください。

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by sumus_co | 2006-12-01 21:44 | 古書日録
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