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元禄の美酒に浮かるゝ毛糸帽阪急芦屋川駅から線路の北側の路沿いに東へ数分歩く。上は芦屋川の景。額縁店でありドナルド・ジャッド家具の展示場であるHAZへ。今日から開かれる「これくたあ・ひとり壱展プロジェクト 第1回 羽雀節文斎蒐集品より『紙のモダン大阪フェティシズム—大大阪漂流—』」(〜12月2日 火・水曜休)を見る。橋爪節也氏コレクション展である。近代大阪関係の300点近い紙もの資料をじつにオシャレに展示してあった。 橋爪さんがいたので説明をしてもらいながら三階までじっくり見せてもらった。それぞれ曰く因縁のある紙ものばかりを選りすぐったらしく、まだまだ展示したい品物はごろごろ唸っているらしい。単に大阪資料というだけでなくデザイン・ソースとして見てもきわめて新鮮であろう。文芸関係の稀本もぬかりなく集めているし、少年時代の万博体験も生かされている。近所の方は必見ですぞ。 芦屋川駅近くのトルコ料理の店サクルエブで橋爪さんらとランチ。はや一年前のことになってしまったトルコ旅行を思い出した。橋爪さんは芦屋市立美術博物館で講演を行うというので一緒に付いて行く。大阪慕情という展覧会に付随した連続講演の最終回。演題は「近世大阪画壇への誘い」で、学芸員の明尾氏との対談形式。関大の中谷伸生氏も飛び入りで参加。 東京と京都には画壇があるが、大阪に画壇がない、それは大阪がアジアからの文物の流入拠点でありとくに中国趣味が強かったせいかもしれない、大阪近世の絵画は日本では軽視されているため現在も英米の研究者に買い占められる傾向にある、もうすでにロンドンへ行かないと大阪の画家の研究は難しいほどだとか。大阪に特徴的なのは「聞人(ブンジン、世に聞こえた人)」。それは木村蒹葭堂を代表とする趣味人のことで、余技として絵を描いたり、コレクションしたりする人種ようするに近代の「趣味人」である、などなどの話あり。 まったく知らない画家の名前がたくさん出て来て、近世の奥深さを知らされる。そういった作家の展示も行われており、たしかに、まあ驚くようなレベルではないけれども、それなりに見るべき所はどんなささいな作品にもある。 で、なぜかレクチャー会場の片隅には剣菱と大源味噌の出店が出来ている。いずれも大阪の老舗。剣菱は四十七士が討入の直前に景気付けに飲んだブランドだそうだからたしかに古い。創業永正二年(1505)、室町時代。大源味噌はかなり新しくて文政六年(1823)創業。じつは展示物の中に大阪の老舗の店頭を描いた幕末頃のスケッチ帖が出ており、それにちなんでのことらしい。 剣菱が元禄時代の酒を復活させたという限定販売品を試飲させてもらう。いあや、驚いた。最初はみりんかな、と思ったくらい。ライス・ワインの命名がぴったりのコクのある深い味。濃厚な白ワイン、貴腐ワインに似ていると言っていいだろう。酒を水で薄める話がよく落語などに出て来るが、この酒なら少々薄めた方がいいくらいである。二度ほどお替わりをいただく(小さいカップなのですよ、念のため)。大源味噌のおかずみそも各種揃っており、試食してみると、これもかなりいける。 美術館のレクチャーで酔っぱらうというのもめったにない機会だ。酒を片手に明尾氏の持参していた軸物などをみんなでワイワイと見せてもらう。なんとも楽しい会だった。そのまま橋爪さんがHAZの会場へ戻るというタクシーに便乗、芦屋川駅前で別れた。 ÷ ゆきうりさま ご教示ありがとうございました。愚かにもアーティスト検索エンジンをまったく思いつかなかったです。
by sumus_co
| 2006-11-18 21:23
| 古書日録
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