先日言及した碧梧桐色紙解釈について戸田さんよりご意見をいただいた。要点だけ引用すると、《「こおんな」とも読みますが、音としては、 「しょうじょ」の方が俳句の流れが良く私は、そちらを採りました。》《「鮎の釣果、旅館、女中」と言う連想もできますが、私は普通の山川の風景と捉えました。》《漢語「小女」は、「しょうじょ」の読みで良いのではないかと思っています。》という内容である。
むろん小女(セウヂヨ)と読んで間違いだというつもりはまったくない。ただ、この句の小女以外の漢字はすべて訓読みである(戸田さんもそう読んでおられる)。「あゆをききにひとはしりセウヂヨのがけおりてゆく」よりも「あゆをききにひとはしりこをんなのがけおりてゆく」の方がとりたてて流れが悪いとは思えない。旅中吟であることはほぼ間違いないということで、ご指摘のように「鮎の釣果、旅館、女中」とごく自然に解釈した方がリアルな情景が浮かぶと小生は考える。だから絶対こをんなでなければならないということではない。あまりリアルでない方がいいという考え方もあろう。いずれにせよ見解の相違がある方が面白い。
また湯川書房からの山本六三展葉書がギリギリになったのは、戸田さんが案内状を作製されて、それが遅れたためだとのこと。これは失礼しました。「湯川さんらしい」と書いたのを訂正し、湯川さんの名誉回復をしておきます。小生、本当は初日土曜日に行きたかったが、『神戸の古本力』の再校が午前中に届いてしまったので、これを捨てておいて出る訳にはいかなった。必ず拝見します。
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スムース文庫のなかでは異色だった築添正生編『1914年ヒコーキ野郎のフランス便り』(スムース文庫、二〇〇四年)。これは、その分、航空史関係の方々の注目を浴びた。昨日、築添さんよりお手紙をいただいたが、それによると、築添さん所蔵のバロン滋野の絵葉書を日本航空協会(?)に寄贈するという話になっているらしい。ついては『1914年ヒコーキ野郎のフランス便り』を十冊送って欲しいとの依頼である。あわてて在庫を調べてみれば、何と、十冊取り出すと、もう何冊も残らないではないか。これでスムース文庫で残っているのは『ふるほんやたいへいき』と『加能作次郎三冊の遺著』だけとなった。そうそう『岡崎武志詩集風来坊』ももう少ししかないが、まだ少しの余裕はある。