林蘊蓄斎の文画な日々
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冬立つ日F2竜巻庵(いほ)過ぎぬ

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佐野元恭編『頭書図彙元明史略字引大全』(吉岡平助、一八八〇年)の巻頭にある色刷り地図。太平洋が「小東洋海」とされている。日本が大きい。本文もすべて銅版刷り。佐野元恭は旧和歌山士族で明治初年に伊勢国の久居義塾の教授者であった。序は関徳(遂軒)。イラストがたくさん入っていて面白い。三冊五百円のうち。

÷

このはな文庫(左欄外のエキブロ参照)の十谷あとりさんより『空中底辺』the 8th letter が届く。A5版中綴じ16頁の個人誌。加藤英彦歌集『スサノオの泣き虫』の紹介と感想。俳句。漫画「降っても晴れても本日和」からなっていていい感じ。俳句のなかからいくつか抜いてみる。

 ゆづられてどうぞの椅子に春のかげ
 ピアニカのソの鍵盤の青嵐
 シャツは白 炭酸水のひとくちめ
 天瓜粉座敷童子のゐさらひに
 萩の道今朝も還らぬひとのゐて

日常のなかにふと翳りのようなものがのぞくところがいい。デイリー俳句はこのところ不調なり。ミカンと散歩しなくなって季節感が薄れた。本日の庵過ぎぬは書斎に整理中の本が足の踏み場もないくらいに並んだ様。やや苦しい。

÷

突然だが、明治初期の流行歌「こちやえ節」(一八七一年頃)に川崎の万年屋というのが出て来る。子供の頃にこの歌を習ったときからずっと「マンネンヤ」が気になっていた。本日氷解。

お江戸日本橋七つ立ち、
初上り、
行列揃へてあれはいさのさ、
こちや高輪夜明の提灯消す、
こちやえこちやえ。

恋の品川女郎衆に袖ひかれ、
乗掛お馬の鈴ケ森、
こちや大森細工の松茸を、
こちやえこちやえ。

六郷渡りて川崎の万年屋、
鶴と亀との米饅頭、
こちや神奈川急いで程ケ谷へ、
こちやえこちやえ。
(下略)

『本の窓』(小学館)11月号の清博美(せい・ひろみ)「古川柳で味わう日本語の妙味」にその説明が出ていてなるほどと思った。

 九や三を二が連れて行く万年屋(『藐姑柳』第四篇)

《四十二歳の厄年の男が、十九歳の娘と三十三歳の女を連れて、厄除け祈願のため川崎大師に参詣し、その途中「六郷川」の西川畔にあった「万年屋」という奈良茶漬の店に立ち寄ったという意味の句である》

『藐姑柳(はこやなぎ)』は天明五(一七八五)年に刊行された川柳集。弥次喜多道中にも登場する。

ちなみに「奈良の茶粥」というのは米一水八〜九で炊いて煮上がってくると粉茶を包んだ「茶ン袋」を入れてよくかき混ぜ余熱で仕上げるものだそうだ(『あまカラ』46号、一九五五年六月)。万年屋の奈良茶飯とはかなり違うようである。
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by sumus_co | 2006-11-08 21:16 | 古書日録
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