今日は満月。
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福田和也『贅沢な読書』(ちくま文庫、二〇〇六年)が届いた。どうして? と思ってジャケットの袖を見ると、《カバーデザイン間村俊一》《資料提供『明暗』(大正9年刊)(林哲夫氏蔵)》となっていた。そういえば、間村さんから一日汗みずくになって神保町を探したけど見つからなかったという電話があったっけ。縮刷の重版だから、そんなに珍しい本じゃない。(林哲夫氏蔵)って要らないでしょう。しかし、さすがスカッとさわやかなジャケットになっている。
漱石の『明暗』を論じた章にざっと目を通す。漱石を大雑把に読み飛ばした経験では『明暗』がいちばん面白かった。福田氏はこう書いている。
《お金の問題をちゃんと描くというのは非常に大事なことです。特に近代小説においては、一番大事といってもいいくらいで、逆に云えば、お金の扱いに関してゆるい、そこから逃げているというのが日本文学の一つの大きな弱点なのでしょうね。》p110
まさに金に苦しむ主人公の様がいかにも近代的というか現代的であって、昭和時代の私小説に直結するモチーフがある。《日本文学の一つの大きな弱点》かどうかは知らないが。
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神戸の古本力アンケート、さっそく回答くださった方が現時点で七名。たいへん面白い。百人百様の神戸古書店像があるものだ。デイリー・スムースの読者のみなさんも気軽に投稿してください。ペンネームでもけっこうですので。