林蘊蓄斎の文画な日々
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故郷(くに)をいで朝顔となる一千年

朝顔はネパール原産だそうだ。九〇〇年に薬品としてわが国にもたらされたという。



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Aさんより大庭柯公「浴衣がけ」(大正五年夏、朝日新聞連載)の切抜帳をいただく。深謝。いわゆる「タテキン」で発見されたとのこと。タテキンの奥深し。内容は旅行記漫談とでもいうべきもの。古今東西の旅行について蘊蓄を傾けている。

その第二回にスタール博士が登場する。

《十返舎一九で文芸的に、広重で芸術的に最後の幕を閉ぢたと思はれた東海道五十三次は、亜米利加の弥次郎兵衛お札博士スタール君によつて、どうやら復活したらしい。》

《どう見ても東海道の道中趣味は大観観山あたりの画巻物旅行に開かれて、スタール博士の弥次喜多式膝栗毛旅行によつて確に復活の気分に向いて来たらしい。併しながらスタール博士のお札旅行も、詮ずる所広重の五十三次の絵から浮び出でた想ひ着きに相違ない。随つて半世紀の久しき間、荒廃のまゝに捨てゝ顧みられなかつた東海道が、米国一学者の膝栗毛旅行によつて、新道中旅程として大正の今日邦人の間に復活したことが事実ならば、丁度写楽や広重の浮世絵を西洋人から見出されて、初めて其芸術的価値を認め得た邦人の狼狽方と同様、東海道は汽車で往来するものと定め込んでゐたことを、我等は今内々で耻入つてをる姿である》

《鞠子の宿は如何に荒屋であるにしても、とろゝ汁は此処でこそ初めて珍味と為る。妙なブツブツのある薯汁で全然布哇(ハワイ)のポイに似てゐるなどゝ無風流な評を下したのはスタール君千慮の一失である》

これは古書の森日記に出ていたフレデリック・スタール『お札行脚』(金尾文淵堂)のことかと思ったのだが、黒岩女史は《アメリカ人にして、シカゴ大学で人類学の教授を務めるスタール博士が、大正6年に来日したときの紀行文。博士は大の日本びいきで、日本での生活は純日本式。羽織袴に白足袋に草履履き。風呂に入り、刺身を食べ、味噌汁を飲み、畳の上で行儀よく座るという》と書いておられるから、『お札行脚』ではなく、『お札博士の観た東海道』(大日本図書、一九一六年)のことを指しているようだ。スタール博士については神保町系オタオタ日記が参考になる。

「浴衣がけ」には『お札行脚』の挿絵を描いた中沢弘光についても一言触れられている。《スケッチをもつて有名な中沢弘光君なども丹青界の旅行家として是非算へねばならぬ》(画家と旅)。中沢弘光と言えば、次回のUBCに合わせて「明治浪漫の画家ふたつの中澤弘光展」が東京古書会館2Fギャラリー(10/15〜21)と文房堂ギャラリー(10/16〜21)で同時開催されるそうだ。これは見ておきたい。



小林さま
さすが行き届いた解説です!
吉岡実の装丁作品36
[PR]
by sumus_co | 2006-08-14 20:29 | 古書日録
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