林蘊蓄斎の文画な日々
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水撒て膝丈ばかりの虹ふたつ

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小野十三郎の兄が志賀直哉と将棋を指したということに関して、寺島珠雄『小野十三郎ノート』(松本工房、一九九七年)に次のようにあった。

《小野さんの異母兄藤一郎氏は洋画家、アトリエ付きの邸を奈良高畑に構えていた。志賀直哉よりも高畑の先住者だ。そういう藤一郎氏と志賀直哉の交際がただの近所づきあいではない親密だったことは、尾崎一雄の『あの日この日』(講談社)に詳しいが、藤一郎氏に同行して小野さんも何度か志賀邸を訪問、麻雀卓を囲むなどしたと聞いた》《藤一郎氏は一九五八年死去し、長男の一一[ルビ=かずいち]郎氏は去年、小野さんから間もなく叔父の後を追った。私と同年だった》p158

寺島さんは一九二五年生、九九年歿。小野十三郎は一九九六年歿。『あの日この日』(講談社文庫、一九七八年)の索引によれば小野藤一郎は十一回登場している。

晩年の寺島さんは亡くなるまで尼崎に住んでいた。街の草さんの家の近くだったそうだ。『低人通信』という個人紙を発行しておられ、いただいたものが手元に十数通残っている。手紙と葉書も数通あるが、お会いしたことはなかった。藤沢桓夫と親しくしていた時期もあったようで、将棋を指しておくんだったな、という意味の手紙をもらった記憶がある(『ARE』10号の拙文「文士の将棋熱」の感想)。

いつものように『海会』などを海文堂書店福岡店長よりいただく。中村よおさんの『肴のある旅—神戸居酒屋巡回記』(創元社、二〇〇六年)の出版記念「歌うサイン会」8月27日午後2時〜が告知されていた。

《神戸市消防局の月刊広報誌「雪」で2003年〜2005年に連載し、好評のうちに終了した「神戸居酒屋散歩」に大幅加筆。新たな店やもう失くなってしまった店、そして、音楽と酒・文学と酒・漫画と酒・落語と酒など<酒>にまつわる渾身の書下ろしを加えて贈る、神戸居酒屋本の決定版!
 登場する店。八島食堂中店・東店、金盃、アビョ〜ンplusONE、ゑん屋、丸吉、スタンド・チンタ・リカー・ホール・ボーダースペシャル……ほか多数。
 よおさんの生ギターでの"ライブ"と"サイン会"。一回で二度おいしい、【歌うサイン会】。こんなことやった本屋、ないかも……。ぜひご来場ください!
★遠方のお客様には、サイン本の<お送り>も承ります★》

荷物のなかに『LOVE書店!』第2号というフリーペーパーがまざっていた。タブロイド16頁フルカラー。発行元は本屋大賞実行委員会。五島列島中通島のクラークケントや千駄木の往来堂書店などが紹介されている。

面白いのは長嶋有氏の連載コラム「ウットリ堂書店」。サイン会をしないという日頃の信条に反して、ある書店で合同サイン会を開いたところ、長嶋氏のところにだけ行列ができたそうだ。なんと《彼らの多くは背が低く、ごま塩頭をしていて、ほぼ全員がパラフィン紙に包まれた僕の受賞作の初版を何冊も持ってくる》。要するに古書業者がサイン本を求めて集まったわけである。これを長嶋氏は《怖かった。蹂躙されているという言葉が浮かぶのだった》と書いている。サイン本が珍しい作家はそうなりがちではある。
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by sumus_co | 2006-08-06 20:44 | 古書日録
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