『ナシヨナル第二 NEW NATIONAL SECOND READER.』(吉岡平助、一八八七年三月一八日再版御届)。以前、細川平助発行の『ナシヨナル読本第二』を紹介した。本書はそれとほぼ同じ内容(元版の複製なので同じなのは当たり前)ながら細部が少し違っている。また、この吉岡版は質的には細川版より劣る。挿絵の木口木版もあまり上等とは言えない。
『ナシヨナル読本第二』(細川芳之助、明治二十一年第三版)
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『ナシヨナルニユーリーダー』第三
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明治二十年頃に英語リーダーが競って発行されたのは明治十九年に高等小学校で英語が正課と決まったからである。そこでいろいろな種類の英語のリーダーが発行された。これは西洋人の生活習慣が一般に広く普及するかなり有効な手段となったのではないかと思われる。
中にひとつ興味を引く挿絵があった。ちょっと変ったサンタの挿絵。
《Mamma was putting Milly and May to bed, the night before Christmas, and she told them this story.
"After little children are fast asleep, the good, old Santa Claus comes down the chimney with a great bag of toys."》
元版ももちろんこれに相応する挿絵だったのだろう(?)。なんともビミョーな姿である。サンタというよりナマハゲ?
日本で初めてクリスマスが祝われたのは何時か?
『彷書月刊』二〇〇五年一二月号「特集・明治のクリスマス」によれば、日本人だけの手になるクリスマスは明治十二年十二月二十五日に横浜公会で初めて行われたという(山本秀煌)。また明治七年には原胤昭(十字屋の経営者)が東京第一長老教会で受洗した記念として築地大学の宣教師カロゾルスの指導を仰いで行っている(『植村正久とその時代』)。
また明治十二年十二月四日付け朝日新聞には二十五日は耶蘇の大祭日なので信者を川口天主堂に集めて行事をする旨の記事が出ているという。同紙上では明治二十五年に東京の菓子店壺屋が「クリスマスお菓子」の広告を載せたのが「クリスマス」という言葉の初出だとも。記事に現れたのは明治三十二年だそうで「基督萬寿(クリスマス)」、またツリーのことを「クリスマス吊」と書いた。
原胤昭回顧談(前出書)によればサンタクロースも登場した。
《それから、サンタクロースだが、これは是非純日本風の趣向でやらうといふので、裃をつけ、大小を差し、大森カツラをかぶり、殿様風の身拵へ厳しき扮装にして、さて、そのサンタ爺さんの役をつとめたのは、誰あらう、戸田忠厚其の人であつた。》
殿様姿のサンタクロースも異形と言えば異形であろう。
巻末の大売捌所一覧。