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松商交友会誌と書架

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『松山商業学校交友会二十周年記念雑誌』(大正11年3月)。この写真は同誌より「全校生徒」。明日のトークのために洲之内徹の資料箱を開いていると、この雑誌が出て来た。洲之内徹は松山中学(現・松山東高校)出身なので、どうしてかなと思っていると、これを見つけてくれた某古書店主のメモが挟んであった。

《ふせんのはってあるところの卒業生「洲之内元太郎」は徹の父親?》

この冊子からこの名前を見つけ出してくれるとは、ただ者ではない。たしかに洲之内元太郎は徹の父である。松商の第一期生だった。

松商と言えば野球である。当時から野球には力を入れていたらしいが、まだこの時点では全国優勝は果たしていない。大正八年に全国大会(全国中等学校優勝野球大会=現在の全国高校野球選手権大会)に初出場し二回戦負け、大正九年は三回戦で慶応に負けている。十年もやはり三回戦で京一商に敗北……。とにかくレアな洲之内徹資料である。

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もう一冊紹介しておきたいのはこちら。『えびな書店古書目録書架』十四号(一九九一年一二月)特集・洲之内徹と気まぐれ美術館。これも同じ古書店から買った。洲之内徹に関連する画家たちの画集や資料などがズラリと掲載されている。青山二郎特集とともに、えびな書店でなくてはできなかった画期的な特集だろうと思う。ここに後藤洋明さんが「気まぐれ美術館の勝手口から」という後藤さんらしい文章を執筆しておられて、それもまた貴重な証言のように思われる。後半の方を一部引用しておく。「洲之内さんの日常的な思い出」について。

《洲之内さんはぬる目の風呂が好きだとか、イモが好物だ、特に大学イモが好きだったとか、堅い豆をよくかじっていたとか、種を炒ったもの(ヒマワリや、カボチャや、スイカの種子)を上手に殻だけ舌の上に残して喰べていたとか、鉛筆の削り方が実にうまいとか、(もっとも図面を引ける人は、みんな上手だと思う。洲之内さんは美校の建築科だもの。)こんなどうでもいいことを書いてもしようがないではないか。》

こういう日常の記録というのが残りにくい。よく書いてくださった。種子を好んだというのは中国大陸での生活が長かった(八年間)ために違いない。

《思えば、洲之内さんは、たくさんのものに囲まれている時が一番幸せだったんだろう。たくさんの絵に囲まれ、多くの女性から愛され、憎まれ、そして晩年は、いろんなジャンルのレコードやテープに囲まれ、(戦時中、北支の太原の洲之内公館には、かなりの量のクラシックレコードが集められていたという。)いつも回りが賑やかだった。賑やかなのが大好きだった。賑やかでなければじっとしていられないのだ。何かから常に逃れようとしていたからではないだろうか。
 子供みたいな所もあると思う。新しい玩具を与えると、さっきまで、手に握りしめていたのを放り出し、新しい方に夢中になる、それでいて古い方を片付ける様とすると、ダメだそれも置いておけ。まるで駄々っ子の様。寂しがり屋なんだな。》

この観察もたいへん参考になる。玩具を欲しがる子供なのだ。まあ、これはコレクター的な性格をもつ人はみんなそういうものであろう。ただ、モノを集めることについて洲之内自身はこういう風に書いている。

《もともと、私には物を集める趣味、あるいは意志というものがない。これは、私が、概ね常に一所不在、いわば漂泊と遍歴の半生を過ごしてきたことによるものだろう。現実にそうだったし、精神的にそうだった。
 いつどこへ行くことになるかわからない、いつどうなるかわからないという暮らしの中で、人がまず心掛けるのは物を持たないということ、身軽でいるということだろう。考えてみれば、私は、非合法の左翼運動をしていた青年時代、その後に続く、足掛け九年中国の戦線で過ごした戦争中の時代、そしてその後の、完全無職無収入の三年間を中にはさんでのどん底の貧乏暮らしの時代の、どの時代にも、物を持たないというのが生活信条のようなものであった。》(洲之内徹「コレクション考」)

これもあながち嘘だとは思えない。だから生粋のコレクターとは呼べないだろうが、ただし、人(とくに女人)やモノに執着することは尋常ではなかった。

《ただ、私はときとして一枚の絵と、到底かりそめとは思えない出会い方をすることがあり(たとえばこんどの展覧会に出ている海老原喜之助の『ポアソニエール』とか、重松鶴之助の『閑々亭肖像』のような)、そういうときは勿論置き場所のことなどは考えず、あらゆる手を尽して、なんとかその絵を手に入れようとした。》(同前)

*明日は午後五時よりギャラリー島田で洲之内トークです。ブログは休みます。
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by sumus_co | 2013-09-20 21:30 | 古書日録
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