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会田綱雄と吉岡実

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洲之内徹『気まぐれ美術館』(新潮文庫、一九九六年)を読み直していると、会田綱雄の名前が出ていて、ハッとしたが、よく考えてみると、このくだりはすでに過去のブログで引用したことがあった。会田の手紙を求めたのは覚えていたが、それについてこんな記事を書いたことはすっかり消えてしまっていた。

会田綱雄
http://sumus.exblog.jp/16497150/

『特装版現代詩読本・吉岡実』(思潮社、一九九一年)のアルバムから、洲之内徹のエッセイにも連名で登場する西脇、吉岡、会田(右から)が並んでカメラに収まった図を引用しておく。一九七〇年だから、エッセイより四年ほど前のことになるようだ。

b0081843_20122683.jpg

昨日、以前紹介した雑誌『ゴタ派』についてメールを頂戴した。

ゴタ派
http://sumus.exblog.jp/16571303/

いわく《「ゴタ派」の「編集兼/発行人」である「盛川 宏」は私の父親になります。》。九月九日は父上の御命日だったとか。時折こういうメールを頂戴するのが、ある意味この古本ブログのささやかな存在意義のような気がして悪い気持ちはしなかった。

『ゴタ派』に掲載されている父上の小説を読みたいとご子息はおっしゃる。それでは探し出さなければならない。たしか、詩集に関連した棚に差しておいたはずだが……と探し始めた。いくら探しても見つからない。他の戸棚や段ボール箱のなかも調べたが、どうしても見つからない。

そんなことで詩書を次々に抜き出していたら小田久郎『戦後詩壇私史』(新潮社、一九九五年)が現れた。目的はこの本じゃないのだから開かなくてもいいのにうっかり開いてみたところ「吉岡実と会田綱雄」という見出しが目に飛び込んで来た。

《吉岡実とは、「現代詩手帖」に詩をもらってからの長いつきあいだった。吉岡が勤めていた筑摩書房が、目と鼻の先にあったので、昼となく夜となく、昭森社ビルの向かいの「ラドリオ」とか、筑摩書房の近くの喫茶店とかで会った。》

《装幀の面でいうと、ぜったいに譲らない美学をもっていて、杉浦康平が精緻な頭脳で作った『吉岡実詩集』の本文レイアウトを反故にしてしまい、自己の編み出した二十六字詰めの字詰を押し通してしまったこともある。そこに、無駄のない文字とカットで、緊張したバランスをつくりあげる吉岡装幀美学の原点を見る思いがした。》

《吉岡実と同じ筑摩書房の禄をはんでいた会田綱雄については、こんなトラブルがあった。
 一九七四年の二月か三月ごろ、「歴程セミナー」かなにかの帰り、草野心平がやっていたバー「学校」へいったことがある。セミナーの校長をしていたので、なんとなく十名くらいのメンバーが、及川均をかこむかたちになった。及川の隣りの席には、集英社時代に及川に面倒を見てもらった三浦雅士が座り、その隣りか隣りに、会田綱雄がむっつりと座っていた。一座の話題は「現代詩文庫」にかたむきがちだった。》

そこで現代詩文庫の判型や二段組みの善し悪しについて論議になった。

《そんな話をしていたとき、それまではだまって盃を傾けていた会田が、突如、途方もない大きな声でどなったのである。
「ーーだまれ! なにが現代詩文庫だ!」
 座はいっぺんにしんとなった。会田がなにをいおうとしているのか、とっさに私には見当がつかなかった。三浦がすばやく会田の隣りに座りなおして、会田をなだめつつ座をとりなした。気まずい雰囲気のまま、自然に座談の輪は崩れ、三々五々に散っていった。
 数日後、私は会田に電話をかけた。
「ーー現代詩文庫に、会田さんの巻を作らせてもらえませんか」
 会田は絶句し、二、三分黙ったままだった。殺気のようなものが薄れ、やがてしゃがれた低い声が伝わってきた。
「わかった。よろしくたのむーー」》

吉岡が杉浦のレイアウトを拒絶した! これもむろん以前読んでいたはずだが、すっかり忘れていたので新鮮な衝撃だった。やはりアーティストたるものこうでなくてはいけない。対して会田についてのエピソードはやや子供じみた感じがしなくもないが、正直な人間だったという証でもあろう。

結局『ゴタ派』は見つからなかった。処分するはずはないのでおそらく郷里へ移動させたのだろう。ならば、少し時間が必要だ。その旨メールを返したところ、日本近代文学館に所蔵されていると知人に教えられたと返事があった。すぐに検索してみるとたしかに同じ第一号が見つかった(おそらく第一号だけの発行だったのではないかとご子息は推測しておられる)。これならば郵送でもコピーを請求できる。日本近代文学館、やるじゃないか。
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by sumus_co | 2013-09-10 21:07 | 古書日録
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