『古本海ねこ古書目録』6号(二〇一三年九月)届く。見所満載。コドモの本、あるいは絵のある雑誌などが、これほどまでの広がりと奥行きを持っているとはつくづく感心する。今回とくに興味をひかれたのはチャップブック・コレクション23冊一括という出品。
《チャップブックは、主に17世紀から19世紀にかけてイギリスで発行された小さな本。行商人らが各地を巡って市場や祭で売りさばき、売れた分の代金を印刷業者に支払うシステム。大衆向けの文学や実用的な内容のものなど内容はさまざまですが、低価格で大衆に楽しみをもたらしました。しばしば木版画の挿絵を含む、8、12、16、24ページの体裁で、チープなつくりのものが多数。しかしながら、のちに蒐集家らのコレクション対象になり、19世紀の蒐集家によって「チャップブック」と名付けられました。》(本目録より)
THE CHAPBOOK
http://www.bekkahwalker.net/comt111a/websites_11/resheske_site/index.html
このサイトによれば十六世紀に発生したらしく。労働者階級の識字率の向上に一役買ったらしい。新聞というメディアが普及するに従って下火になっていった。本の行商については以前少し書いたことがある。
本の行商人
http://sumus.exblog.jp/13802970/
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『いい香のする名前 フョードル・ソログーブ童話集』(書肆盛林堂、二〇一三年八月二三日)。ソログーブの『影絵』(前田晁訳、精華書院、一九二二年)を底本とした内容。岩波文庫でも三月に『かくれんぼ・毒の園 他後編』が再刊されたということで、スプラッター・ファンタジィが注目されているのかもしれない。たしかに独特のタッチだ。「少年の血」などは、現実を中和させるべく徹底して無慈悲を描いたという逆説的なものすら感じさせるが、子供皆殺し、これが今現在、逆説ではなく、われわれの世界のあるところではリアリティとしてそのままに起こっている事実なのだ。愚かなるかな。それにしても、まさに「進撃のソログーブ!」と言いたい。
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『雲遊天下』114号(ビレッジプレス、二〇一三年八月三〇日)、頑張っている。「〈街とメディアと市民〉のかたちを模索して」本間健彦インタビュー(聞き手:南陀楼綾繁)に喫茶店が登場したのでメモしておく。
《ーー『新宿プレイマップ』の編集部があったのは、新宿二丁目ですね、当時からゲイ店とかはあったんですか?
本間 ありましたね。だけど、あの時点で二丁目で一番有名だったのはヌード・スタジオでしたね。むかしの赤線の店がそういうものに切り替えたんです。その中でゲイの店がだんだん増えていった感じだったと思います。
編集部の新宿通りを挟んだ向こう側には、ミニコミを扱う〈摸索舎〉がありました。二丁目の仲通りには〈コボタン〉という漫画喫茶があって、宮谷一彦が展覧会やったりしていました。小さい店だったんだけど、漫画好きが集まっている喫茶店でした。》
『新宿プレイマップ』の創刊は一九六九年六月。「コボタン」は宮谷一彦の漫画にも登場していたようなあいまいな記憶がある。