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集書日誌 高橋新太郎

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ロードスさんで『彷書月刊』のバックナンバー、架蔵していないと思ったもの、四冊ほど買った。帰宅してバックナンバーを見てみると、持っていないのは一冊だけだった。しかも、このとき初めて鞄の中に『彷書月刊』バックナンバーのリストを入れて持ち歩いていたことを思い出した。モウロクはしたくないものである。

あちらこちら斜め読みをしていて、高橋新太郎の連載「集書日誌」に『牙』の書影が出ているのが目に留まった。「「神戸詩人事件」関連詩誌II」(一九九六年九月号)。

《月の輪書林から詩文冊志『牙』九冊(季刊昭和9年1月〜昭和11年9月)を入手した。》

高橋は《当面の小生の関心事は、小規模ながら自覚的に反ファッショ文化運動を持続させた竹中久七・高橋玄一郎・藤田三郎らシュールレアリスム詩人達の「『リアン』芸術運動」との対比において「神戸詩人事件」を相対化しようとするところにある》と書いてこう続ける。

《十五年戦争の経緯の中でかつて旧来の抒情詩人たちを〈無詩学時代の詩人〉として貶しめていた主知的なモダニズム詩人達のほとんどが、自己の詩法を捨てて、戦争謳歌の注文詩を書き、こぞって、厳しい漢語や古語を多用した古い文体の詩を、〈をらびの詩〉を護身の呪文のごとくに大合唱した、あのダミ声の季節の中で、それが小規模であろうと、どのようにささやかなものであろうと、自己の詩を保守し反ファシズムの文化運動を持続させようとした試みは、貴重な遺産として記録されるべきだろう。》

そして《ささやかな抵抗なるが故に、常民にも可能性として持続し得る抵抗として重い意味をもつ》と結んいる。『牙』については季村敏夫『山上の蜘蛛』(みずのわ出版、二〇〇九年)および『窓の微風』(みずのわ出版、二〇一〇年)にも詳しいので、興味ある方は参照されたし。

高橋新太郎文庫
http://www.noracomi.co.jp/takahashi/

この時期の『彷書月刊』はほとんど読んでおらず(だから今バックナンバーを集めているわけだが)、「集書日誌」もこれまであまり読んだ記憶がない。今、あらためて読み始めると、これがなかなか面白くて止められなくなりそう(なので探すのをやめた)。高橋新太郎文庫サイトの「掲載書籍一覧」によれば、『彷書月刊』一九八八年五月号「フェノロサ氏演述 大森惟中筆『美術真説』のこと」から三ヶ月つづけて寄稿したのが最初で、集書日誌は九二年一〇月「桐生でボン書店本に出遭う」から始まったようだ。最終回は「集書日誌75 京阪神の戦後誌ほか 月の輪書林古書目録から」九九年一〇月号。すなわち『sumus』のメンバーが『彷書月刊』に関わるのと入れ違いのようなかたちになっている。

しかし高橋新太郎の名前ははっきり記憶していた。その理由は二〇〇三年三月号に掲載された月の輪書林高橋徹による「新太郎さん」という追悼文が秀逸だったためである。

《会ったことも飲んだことも数回しかないのに、新太郎さんから注文のハガキが届くと、まだぼくは古本屋でいていいんだという思いにさせてくれる数少ないお客さんの一人だった。
 「虚を突く」注文が好きだった。読めるようで全く読めない。書目を並べているのは古本屋であるぼくなのに、新太郎さんの注文ひとつでその本が生き返り、眼を開かされる。独創的であり、独走の人だった。
 ぼくは、間違いなく新太郎さんの注文ハガキによって古本を見る眼を鍛えられた。》

《店の机の横の、古書目録を書くための資料棚。最上段の左端に「新太郎さん」と背にマジックで書きつけた一冊がある。『月の輪書林古書目録12 特集・寺島珠雄私記』(平成十三年四月)段ボール二十函分の注文を新太郎さんからいただいた時の「荷出し用」の一冊。背はヤニで黄ばみ、小口は手擦れで真ッ黒だけど、記念にとっておいた。個人で、身銭を切って段ボール二十函分の注文は今後も破られることはない、いや、誰かこの記録を破って下さい。》

《二人で三崎町のバーへ行った。三好十郎に魅かれるのはどうしてですかと聞いたら、「ぼくは意志が弱いから意志の強い人にあこがれるんです」と。新太郎さんは、とても意志の強い人に見えたから意外で、とても印象に残っている。》

ここを読んで、ハッとした。先に引用した《常民にも可能性として持続し得る抵抗》ということの意味が「ぼくは意志が弱いから意志の強い人にあこがれるんです」という言葉によって、よりはっきりと心に響いてくるように思えたからである。
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by sumus_co | 2013-08-07 21:29 | 古書日録
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