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近代洋画にみる夢 河野保雄の小宇宙

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府中美術館で六月三十日まで開催中(来年は福島県立美術館で開催されるとのこと)の「近代洋画にみる夢 河野保雄コレクションの全貌」展の図録、および同時に刊行された『コレクター・河野保雄の小宇宙』(芸術現代社、二〇一三年六月一日)も届いていた。

展覧会は見られそうもないので、この図録は有り難いことこの上ない。河野氏は、洲之内徹、大川栄二(大川美術館)、窪島誠一郎(信濃デッサン館他)らとほぼ同じ時期に長谷川利行、関根正二、松本竣介、村山槐多らを蒐集した傑出したコレクターの一人。このブログではこれまでも何度か紹介してきた。

美しき原風景
http://sumus.exblog.jp/17544194/

美のおもちゃ箱 part II
http://sumus.exblog.jp/13067231/

さようなら百点美術館
http://sumus.exblog.jp/5004387/

美のおもちゃ箱
http://sumus.exblog.jp/10089258/

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『コレクター・河野保雄の小宇宙』の方は河野氏への増渕鏡子によるインタビュー、そして河野氏の文章から菅野俊之によって抜き出された珠玉文選から成る。とくにインタビューは青年時代から現在までを語って一気に読ませる内容だ。コレクターや美術商の世界を少しでも知っていれば、更に面白さは倍増する。名画というのは作られるもの、目の前にどんな傑作があっても、誰も認めなければ、ただの石ころである。その石ころをダイヤモンドに変える、いや、ダイヤモンド以上に美しい石ころがあることを蒐集という行為によって示すこと、それがコレクションの本質なのではないか、などと小生は思ってしまう。

インタビューを読んで、登場した作品を図録で確認する。なるほど、と思ったり、そんなものかな、と思ったり、これほど楽しい読書は久し振りだった。

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集めた話ももちろん面白いが、逃がした話はさらに面白い(決していい気味だと思うわけではないのですよ)。松本竣介の油絵一点とデッサン類合わせて二十点、それらを画商から持ち込まれ、全部で五十万円、しかも支払いはいつでもいいですよとまで言われたのに、却下してしまったことがあったという。「全部を入れる額代がありません」というのがその断りの理由だったとか。う〜む、要するに松本竣介にはその時点ではとくに惹かれなかったということなのだろう(後に十数点蒐集している)。

また関根正二のデッサン。一九七六、七年頃。浅草の骨董屋から関根のデッサンがまとめて出現した。価格は二千万円。福島県(関根の出身地)と窪島誠一郎と河野氏の三者が競合した。河野氏は福島県に収まるのならと身を引いたところ、県の予算獲得が間に合わず、窪島氏が購入してしまった。それらが信濃デッサン館の目玉になったのである。

一九七八年、この手に入れたばかりの関根のデッサンを窪島氏は渋谷のキッド・アイラック・コレクション・ギャラリーで公開した。そのときのことは以前書いている。

有元利夫 もうひとつの空
http://sumus.exblog.jp/18788692/

上に掲げた関根の自画像は全貌展図録より。「自画像」(一九一六年頃、福島県立美術館蔵、旧河野コレクション)。この作品そのものが上述の窪島氏の買物の中にあったものかどうか、分からないが、こういう作品を含めて関根のデッサンの優品がずらりと並んだ展覧会だったのを覚えている。

最後に河野氏の蒐集作法を要約したような発言を引用しておこう。

《私は結果的にコレクターといわれているが、作品に対する執着はあまりありません。財力もなく力もない私は、手元の作品を手放したりまた買ったりして近代洋画を勉強してきたといえるのです。作品を売買するということはかなりきついことです。知りうる限りの作家、作品の数々を山ほど頭に叩き込みその価値を常に金銭に置き換えている訳です。欲しい作品に出会うたびに、買うべきか、買わざるべきか、等々それらを土台にして様々に比較検討するわけです。「絵は買ってみなければわからない。」ということがまさに当を得ていると思います。》

「欲しい作品に出会うたび」がポイントなのだろうが、要するに、古本と同じである。
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by sumus_co | 2013-06-28 20:06 | おすすめ本棚
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