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松平土佐守豊雍公墓誌写

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表紙に「御誌石写」と題してある。写本。和紙三枚をこよりで綴じてあるだけだが、いちおう本と言ってもいいだろう。写真のように《寛政元(一七八九)年九月日写》と記されている。この記述をそのまま信じれば、本文中に

《寛政紀元夏五月帰自江府未旬而罹病治療無験竟以八月二十四日丁丑寅時終于正寝嗚呼命哉天不仮年享年四十在位二十有二年》

とあるので、豊雍公歿後間もないころの写しである。どうしてこんなものが京都某古書店の均一に紛れ込んでいたのか、不思議でならないけれども、書物の流転とはそうしたものだろう。

土佐山内家宝物史料館 歴代藩主紹介

《9代 豊雍(とよちか)
誕生:寛延3(1750)年~寛政元(1789)年 享年40歳
父:豊敷(8代) 母:貞光院(豊敷側室・伊佐々氏女)
通称:松之丞・国松
官位:従四位下筑後守→土佐守・侍従
家督:明和5(1768)年 19歳(豊敷の死去により家督相続)
正室:観月院(毛利重就女‐萩藩‐)
法号:靖徳院融昭彜寛大居士
 4人の兄が夭折したため、明和5(1768)年に父の跡を継いで9代藩主となった。
 豊雍は家臣の規律や風紀を厳しく取り締まり、天明の大飢饉への対応に積極的に取り組んだ。また学問を基本に据えた政治を目指して、学者の谷真潮(たにましお)らを登用し、家臣に対しては知行を借上し、自らも厳しい倹約を行った。(天明の改革)しかし、天明7(1787)年には飢饉による困窮と紙の専売制への反発から、吾川郡池川と名野川の農民700人が伊予へ逃散し、高知城下でも打ち壊しが起きるなど、藩政の矛盾は大きくなっていった。兼山以来の学問好きといわれ、長岡郡比江村(南国市比江)に紀貫之顕彰碑を建てている。》

墓誌銘について、吉川幸次郎『中国文学入門』(講談社学術文庫、一九七六年)にはこう書かれている。詩の影響を受けて唐代以降全盛だった約束の多い美文調を改革したのが韓愈(七六八〜八二四)だった。韓愈は自由な文体で人生の種々相を写した。

《しかもそれはもはや司馬遷「史記」のように歴史ではありません。したがって有名な人物、顕著な事件ばかりを、叙述の対象としません。身辺のそこはかとない人物の伝記を、墓誌銘、というのは、その人が死んでから石にほりつけて墓の中へおさめる文章、または墓碑、これは墓の上に立てた石にほりつけた文章、そうした形で書いたものが、韓愈の散文の半分以上をしめます。》

吉川は墓誌の代表的作例として韓愈の「殿中少監馬君墓詩」を挙げている。

[PDF]
殿中少監馬君墓誌銘


《原文は三百五十字ばかりの短い文章でありますが、人生への懐疑が、その中に托されていると感ぜられます。》

吉川のこの本はラジオ放送と講演を元にした文章で、たいへん分りやすい表現になっている。好著と思う。
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by sumus_co | 2013-05-26 21:32 | 古書日録
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