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神戸のモダニズムⅡ

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ゆまに書房から季村敏夫さん編集の『コレクション・都市モダニズム詩誌 第27巻 神戸のモダニズム Ⅱ』が刊行された。季村敏夫さん自身の紹介文が届いたので掲げておく。座右に一冊あれば……いいなあ。

《三月つごもり、懸案の仕事にようやく目処がついた。昨年から手がけていたもので、一九三〇年代神戸のモダニズム詩の編集だった。第二期全十五巻都市モダニズム詩誌(東洋大学教授和田博文監修)を刊行中の「ゆまに書房」からの依頼で、年表作成、概論、そして、竹中郁、福原清らの『AIR POCKET』、第二次『羅針』(全十一冊)、『一家』、亜騎保や小林武雄らの第四次『神戸詩人』(全五冊)の復刻、解題をひき受けた。
 調べものは苦手、こまめにメモをとる習慣などなく、あれはどこの誰の記述だったか、探し出すのにひと苦労の日々。手こずった。三〇年代の神戸詩史、先鞭は君本昌久がつけている。その基礎を背負い、誤植と錯誤を直し、足りないところを補い、さらに大幅にふくらませることがポイント。詩史は四百字詰原稿用紙五十枚まで、神戸の場合、十枚も書きこめばあとは空白になる。そこで、雑誌や単行本の刊行以外に、歴史的な出来事はいうまでもなく、文化や社会、芸能面まで触手をのばし、重層する時間の祝祭面を切り取ってみた。以下は、年表の冒頭と最終部である。

昭和五(一九三〇)年
一月十二日付神戸新聞の読者詩短歌投稿欄『神戸・文藝』(選者は富田砕花)に関西学院中学部に通う十六歳の足立巻一の歌(破れたる行李をとけばなつかしき香にかも似たる古紙の香ひ)、二月二十二日付同欄に十五歳の米田透(足立巻一の『親友記』では川崎藤吉で登場)の歌(新妻をめとりし友はこの日頃遊びに来よと文をくるヽも)、二月二十八日には、詩村映二(三十歳)の詩(「俺の心はどうか」)が載る。

昭和十五(一九四〇)年
一月一日付神戸新聞に「皇紀二千六百年新春を壽ぐ健全娯樂陣」という大見出しで、榎本健一、二村定一、高勢實乘が出演する「エノケンの弥次喜多」(原作波島貞、脚本八住利雄、演出中川信夫、阪急會館)の広告が掲載される。
創刊された詩誌は七月発刊の『BLANCO』(大岡昇平編輯。表紙鳥海青児。執筆者は浅野孟府、鮫島麟太郎ほか。神戸市葺合区中尾町五四旭アパート)のみである。

 エノケン、二村定一(ふらむらていいち)、高勢實乘(たかせみのる)、名をつぶやくだけで心躍る。林喜芳と交友があり、詩集『業』(雑草社、一九八一年)をもつ中川信夫の演出もうれしい。このような芸能面のほか、バラケツ(当時の不良少年)が徘徊する盛り場に触れてみた。ソシアル(神戸区三宮町)、花隈(北長狭通六丁目)、キャピトル(三宮町)、ダイヤ・クラブ(浪花町)などのダンスホールをピックアップ。闇のはなやぎにおびかれ、音楽家の貴志康一や写真家の中山岩太などが夜な夜な集っていたからである。
 竹中郁よりひと世代下の亜騎保や岬絃三、足立巻一や米田透の文学的目覚めが十代の半ば、少年だったこと、改めて知った。後に東京へ転居した中桐雅夫(当時は白神鑛一)や田村隆一らがT・S・エリオットの「荒地」(上田保訳)に出会い震撼としたのも同じ年頃だったことと合わせ、なぜか新鮮におもえたのは不思議であった。
 概論は二つの詩の傾向、竹中郁らと小林武雄らの対照という視点で構成した。レスプリ・ヌーボーをはなやかに身にまとった第二次『羅針』。同じ海港都市にありながら、いわば社会の底辺に属し、シュルレアリスムに影響されたとはいえルサンチマンをたぎらせ、総力戦に傾斜する国家権力と結果的に衝突した第四次『神戸詩人』。二つの潮流の齟齬(『神戸詩人』内にも齟齬があった)、そして、思想の肌あいが違うにもかかわらず、東西に細長い地域社会に同居せざるを得なかったがゆえの屈折した友情、不当弾圧により蹂躙された魂への惻隠の情を描くことに意をそそいだ。
 編集過程で福田知子と対話を重ねた。自分を語らなかった君本昌久が、なぜ詩の歴史に向かったのか。そのことを真剣に問い直した。私は書誌学的なことにくらいので、林哲夫や扉野良人を煩わせた。とりわけ扉野良人との語らいは格別のものとなった。京都轆轤町の町屋の住いをたずねたり、アナキストがたむろした三星堂ソーダフアウンテンのあった元町通を俳諧、海文堂書店の一室で『新領土』をひもとき、埋もれていた神戸の詩人、冬澤弦の作品を発見したことなど忘れがたい。
 脱稿したいま、安堵となつかしさに陶然とするのもある意味自然だが、次なる歩み、一九二〇年代の検証、受川三九郎、高木春夫、近藤正治、平岩混児(何とすべて関西学院系ではないか)などの詩の復刻、神戸のダダイズムやアナキズムの動向の再探索という仕事が眼前にある。》

ゆまに書房
http://www.yumani.co.jp/np/isbn/9784843337776
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by sumus_co | 2013-05-13 16:40 | おすすめ本棚
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