インゼルビューヒャーライ(インゼル叢書)を何冊か頂戴したなかに『LI-TAI-PE Nachdichtungen von Klabund』があった。クラブントによる李太白の模倣詩。刊年不詳。初刊本はインゼルから一九一六年に出たようだが、その後何度か出版されており、表紙も少なくとも三種類はあるようだ。とにかくこの本は戦前のものだろう。クラブントについては以前触れたことがある。
クラブント詩集
http://sumus.exblog.jp/12465178/
クラブント 芸者おせん
http://sumus.exblog.jp/12479964/
芸者だけでなく李太白にも興味があったらしい。漢字は旧蔵者による書き入れ。
野田由美意「
1916 年の文字絵制作に至るパウル・クレーと 「東洋」の関係について」という論文がネット上で読めるが、それによれば、パウル・クレーは一九一七年にクラブントの自由訳『李太白』(すなわちこのインゼル本)を読んだようだ。
当時、戦争で疲弊していたドイツでは老子の思想や李太白ら中国詩がブームのようになっていたらしい。そのなかで大きな役割を果たしたのがクラブントの自由訳『鈍く轟く太鼓と酔わせる銅鑼』(中国詩のアンソロジー自由訳)および『李太白』だったという。クレーは詩を読んだだけではなく、そこから得たインスピレーションによって作品を製作している(具体的には野田論文参照されたし)。
クレーにおける道教の影響は早くから指摘されていたようだ。ただ小生はかなり数多くクレーの作品は見てきたつもりなのだが、まったくそういう感じは受けたことが無かった。クレーとでは道教に対する受け取り方も違うだろうし、特段に不思議ではないものの、実際にクレーが東洋を強く意識していたことだけは確かのようである。
Klabund: Li Tai-pe
http://gutenberg.spiegel.de/buch/2542/1