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「気まぐれ美術館」こぼれ話

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『波』一九七八年八月号(新潮社、一九七八年八月一日)を某書店さんより頂戴した。これは嬉しいいただきものだ。なぜか? このブログの「2007-09-15」にこう書いている。

『古本屋を怒らせる方法』に関口良雄さんのことを書いた文章を収録したところ、南陀楼綾繁氏が関口夫人に送ってくれて、懇切な礼状を頂戴した。そのなかに気になる一節があった。《洲之内さんに主人より私の方が高く買ってくれるなんて書かれた事もありました》。気まぐれシリーズには出ていないはずなので、さて、どこに書いたのか、是非とも読みたいものだ。

洲之内はこの『波』に関口さんのことを書いていたのだ。よくぞ見つけてくれました。感謝。

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本当なら「気まぐれ美術館」に関口さんは登場するはずであった。代わりに一九七八年八月号に掲載されたのは「うずくまる」として鳥海青児と喜多村和について書かれた文章だった(今、芸術新潮がないので、これは新潮文庫版『帰りたい風景』の目次で計算したものです、間違っていたら訂正してください)。

ご覧のように関口夫人が手紙に書いてくださった話は後半に出ている。《私も昔古本屋をやったことがあるので》というのは、昭和二十二年、郷里の松山でしばらく「茶わん屋文庫」を開いていたことを指すのだろう。これは、しかし、残念だ。関口さんのこと、書き残しておいて欲しかった。

それにしても『波』も三十五年も経つとたいへん貴重な資料になっているし、また読物としてもひと味違った面白さが感じられる。巻頭は五味康祐が自殺した美人ホステスのことを書いている。芦田伸介が柴田錬三郎との付き合いを回想している、高橋三千綱がブローティガンを書き、岩元巌の「アップダイク氏訪問記」もある。井上ひさし、山口瞳、倉橋由美子、辻井喬、三浦哲郎らが執筆し、対談が吉行淳之介と秋山駿……。

そして安部公房の「買物」と題したエッセイには安部の撮った写真が図版になっている。安部には歿後出版された『Kobo Abe as Photographer』(Wildenstein Tokyo、一九九六年)という写真集があるが、たしか『芸術新潮』にも写真とエッセイの連載をもっていたはずである。

「買物」はカルチェ・ブレッソンが安部の写真を撮りにやってくる話から始まり、ブレッソンがバシバシ撮ったという記憶もなかったのに出来上がってきた写真を見ると、見事にブレッソンらしい写真になっていて安部は驚く。ブレッソンはライカを使っていた。たまらずライカが欲しくなった。

《さんざん使い込まれ、すべの光る部分が黒く塗りつぶされた、その小箱を横眼でうかがいながら、うらやましかった。見事な作品を送り届けられ、さらにうらやましさが確定的になった。》

と、こう安部は書いているので、自分自身の写真作品にもかなりの自信を抱いていただろうということが知られるのである。この図版の作品も、印刷は粗いけれど、たしかに作家の余技の域は超えている。

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新潮文庫の100冊は、桃井かおりがイメージガールだった。

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なお、表紙の奇妙な字は五木寛之。徒然草第三十五段を引用している。全文は以下の通り。

《手の悪(わろ)き人の、はばからず文(ふみ)書き散らすはよし、見苦しとて、人に書かする、うるさし。》

川瀬一馬校注『徒然草』(講談社文庫、一九八二年、三二刷)より。「手」は筆跡ということで、文字がヘタな者が気にしないで手紙をどんどん書くのはいい、人に書かせるのはいやなことだ、というくらいの意味。
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by sumus_co | 2013-03-15 20:56 | 古書日録
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