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Steve Jobs by Walter Isaacson

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ウォルター・アイザックソン『Steve Jobs』(Simon & Schuster, 2011)。今年の初めにブックオフでひょいと見つけて、ブックデザインの良さに惹かれて買った。ふらふらっと読み始めてみたら、それほど難しい英語ではないので、閑を盗んでは読み続けて、なんとか読み終わった。

この本は国際的にヒットし、評伝のベストセラー記録をすべて塗り替えたそうだが、おそらくアイザックソンの文体に慣れないせいもあるのだろう、どうも、内容が多彩で証言や材料がきわめて豊富なわりには「面白い伝記だったなあ」というふうな素直な読後感にはならないのが自分でも不思議だ。まあしかし、最後まで読めたのだから、自分で思うほど面白くなかったわけでもないのだろう。

Walter Isaacson Author Video
http://authors.simonandschuster.com/Walter-Isaacson/697650

例によって、ここでは注意を引かれたごくごく些細な点をいくつか取り上げてみる。

雑誌『タイム』に勤めていたアイザックソンはジョブズと取材で知り合って以来長らく交遊を続けた仲だった。ジョブズから直接伝記の執筆を依頼され、まだ若いのにどうして、と思っていたが、ジョブズが病気だと知って本気で取りかかった。

ジョブズは内容については一切口を挟まなかったという。だからジョブズの実の父親のこと、若き日の麻薬体験や最初の娘をなかなか認知しなかったことなどあまり誇れないような事実も並べ上げられている。しかしこの程度は評伝なら当たり前、というか絶対条件だろう。序文によれば、ひとつだけジョブズが文句をつけたことがあった。

His only involvement came when my publisher was choosing the cover art. When he saw an early version of a proposed cover treatment, he disliked it so much that he asked to have input in designing a new version.

ジョブズのデザインに対する強いこだわり(何しろ美術学校中退だ)を感じさせるが、これはアップルの製品全般について(ジョブズが不在のときも含め)言えることだろう。ジョブズが文句をつけた結果かどうか知らないが、この米国版のジャケットはじつにスマートに仕上がっている。

サイモン&シャスターのコロフォン(トレードマーク)は岩波書店と同じ「種蒔く人」である(どちらも原画はミレーか)。同社は名前の通りサイモンさんとシャスターさんがニューヨークで一九二四年に創業。初めてのクロスワードパズル本を出版して当てたそうだ。

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序文でもうひとつ「へえ」と思ったのはラショーモン・エフェクトという言葉。

I found that people had such strong positive and negative emotions about Jobs that the Rashomon effect was often evident.

ジョブズに対する周囲の証言が人によって矛盾することを黒澤映画「羅生門」から羅生門効果と呼んでいるわけだ。登場人物それぞれの立場で同じ事件に対する見方がガラリと変る。知らなかった。

また「着物を開く」という表現も出てくる。

"Let's stop this bullshit!" he kept shouting. So the Xerox folks huddled privately and decided to open the kimono a bit more, but only slowly.

ゼロックの技術をジョブズが強引に引き出すくだり。「open the kimono」は「手の内を見せる」という意味で使われているようだ。「胸襟を開く」という日本語の表現もあるが、開くのがキモノだから、これはどちらかというと秘密を見せて身を任せる語感か?

他にも日本贔屓だったジョブズだから、日本に関する記述はあちらこちらに見られる。

"Steve is very much zen,"

ジョブズは禅の思想に深く影響されていた。師匠は Chino Kobun こと乙川弘文(旧姓・知野)。駒沢大学卒業後、京大を経て、永平寺で修業。一九六七年に招かれてサンフランシスコへ渡り、七〇年にロスアルトスへ移っている。八六年にはジョブズがアップルを追い出されて作った NeXT の宗教指導者に任命され、一九九一年にはジョブズとローレン・パウエルの結婚式を執り行っている。二〇〇二年にスイスで溺れた子供を助けようとして溺死。

ジョブズが気に入っていた日本の宿はホテル・オークラと京都の俵屋だという。二〇一〇年には娘のエリンと俵屋旅館に宿泊した。

Erin and her parents stayed at the Tawaraya Ryokan, an inn of sublime simplicity that Jobs loved. "That was fantastic ," Erin recalled.


(つづく)
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by sumus_co | 2013-03-13 20:26 | 古書日録
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