林蘊蓄斎の文画な日々
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麦書房『本』など

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やす様よりコメントいただいて思い出した(もっと早く思い出せよと自分に言いたくなる)。麦書房発行の『本』(一九六四年二月二〇日創刊〜一九六六年三月二〇日休刊、二十四冊)をまとめて持っていたのだった。どこで買ったか、あるいはもらったか、なんとなくではあるが、あるていどまとまったものを貰って、そのあと買い足したような気もする(300円と200円の扶桑書房さんの値段表が付いているのは買ったに違いない)。忘れてしまった。惜しいことに二十三号と二十四号の二冊欠(どなたか譲ってくだされ)。

この付箋のありさまから見て、よほど有益な雑誌だったのだろうと、今、拾い読みしてみたが「凄い!」と思わずつぶやくほどの内容である。詳しく触れる余裕がないのが残念。

《私は歩きながら考えるのが好きだ、いや歩き出してから考えるといった方がいいかも知れない。それで兎に角、作ってみることにした。とは言うものの編集者としては全く幼稚園生に等しい。プラン製作、原稿依頼、割りつけ、書影撮影、校正、広告取り等殆ど一人で馳けずりまわり、唯もう無我夢中で刊行にたどりついたと言う訳である。》(創刊号「編集後記」)

と編集兼発行人の堀内達夫は書いている。上の写真に見えている『古書月報』404号(東京都書籍商業協同組合、二〇〇四年六月)には連載「記憶に残る古本屋」の第八回として田村七痴庵「麥書房 堀内達夫さん」が掲載されており、麥書房(『本』一〜三号まで表紙の表記は麦書房、四号から麥書房、ただし奥付は十号まで麦書房で十一号より麥書房)堀内達夫の業績や人となりが一望できるようになっている。貴重な記録である。これは田村さんに貰ったのだろう。検索してみると何冊かもらって南陀楼綾繁氏に一冊呈上したようだ(ナンダロウアヤシゲな日々 2004-08-27 疲れたぁー)。

創刊号にこんな葉書が挟んであった。というか、テープで貼付けていたのが劣化して取れてしまったのである。

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稲村徹元さんの旧蔵書だったのか! では、ひょっとして稲村さんから頂戴したのかもしれない(確かではないです。日記を探せば分るかもしれないが、何時のことやら…)。稲村さんは国会図書館に勤めておられた方で書誌学者である。斎藤昌三の弟子だったそうだが(真偽はともかく)、とにかく稲村さんはご自分でも書物雑誌を発行されていたこともあり(今直ぐ誌名を思い出さないけれど、昔、某氏に見せてもらって驚いた、やはり凄い雑誌だった)、『sumus』をいち早く評価して下さって定期購読してくださっていた。ばかりか、10号には「切抜帖趣味ーー〈作る〉から〈見る〉へ」を執筆していただいている。たしか上京した折に一度お会いした。インタビューさせてもらおうという話になっていたのだが、それは立ち消えになったか、南陀楼氏がインタビューしたのだったろうか、記事にはならなかった。今、お元気なら八十五歳になられる。

昭和三十九年二月十日に麦書房からこの案内が届き、二十日に八百円「オクル」とメモされている。半年分の購読料である。宛名書きは堀内達夫なのだろうか、おそらくそうだろう。

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富士川英郎「鴟鵂庵詩話」は第二号から二十二号まで連載されている(後の二号は未確認です)。

《扨て、次号であるが、リルケ研究で著名な富士川英郎氏(東大教授)が異色の連載エッセイを本年一パイ執筆して下さることになった。題して「近世日本の漢詩人に就いて」(仮)。》(創刊号「編集後記」)

本年いっぱい(月刊だから十回?)の予定だったわけだが、頁数も記事の内容も極端に縮小した第二期、昭和四十年一月号から随筆は「鴟鵂庵詩話」と他一篇(篠田一士「小林秀雄論」連載が中心)だけで、『本』の看板となって休刊まで(おそらく)続いた。稿料はあっても些少だったろうから、この意味でも毎号休まず書き続けた富士川の律儀さを思うのである。

「鴟鵂庵詩話」初回は六如(りくによ)の『六如菴詩鈔』(天明三年)から始まっている。天明から寛政へかけての漢詩隆盛のさきがけとなったのが、それまで唐詩の模倣に終始していた詩壇の傾向を嫌って宋詩を手本とした新鮮な六如の作風であった、という。

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最初の写真に『Poetica』第三号(小沢書店、一九九二年一月・二月)「特集・富士川英郎」も見えているが、これは『本』『古書月報』といっしょに同じ場所にしまっておいたわけであって、すっかり忘れていたが、あるいはこのひとまとまりで何か書こうと考えていたのかもしれない。結局このブログでその目的を果たしたということになる。
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by sumus_co | 2013-02-26 20:56 | 古書日録
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