『冬の本』(夏葉社、二〇一二年一二月二〇日、装幀=和田誠)読了。八十四人もの執筆者がいるので、見開き二頁一篇というじつに読みやすい構成ながら、かなりお腹いっぱいの充足感のある内容になっている。
なんといってもまずは表紙がいい。
マラマッド『レンブラントの帽子』(夏葉社、二〇一〇年)も和田誠装幀だったが、『冬の本』もやはり鮮やかな手並み。マフラーのオレンジが何とも効果的。
ワンテーマのアンケート風な本はこれまでも数々ある。企画としてはこれ以上安直なものはないだろう。しかし、その人選やテーマによってその編集者のセンスが問われるし、面白さも左右される。本書は文句なく面白い。寄稿者も有名無名、ジャンル横断でじつに多彩、拾い読みをするだけでも価値ある一冊。
個人的には本の話よりも自分自身の体験談を中心にしたものが良かったように思う。内堀弘「冬の音」、これは田村七痴庵追悼(そういえばもう丸二年になる、「
田村治芳さんの訃報」)。浜田真理子「ともだち」、又吉直樹「なにもない冬」。山下賢二「冬の大人と子ども」……と挙げて、みなさん文筆家が本業ではないことに気付いた。