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新民謡集青い手帖

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柳よし雪(矢倉年)『新民謡集青い手帖』(林書店、一九三五年六月一〇日、装幀=濱邊萬吉)。発行所の林書店は《大和・郡山・柳町》、発行者は林吉之助。

《私と民謡との生活は約七年程でほんたうに書きたくなつたのはこゝ三年程である。そして私はもう疲れて今民謡への別離に立つてゐる。あきたらなくなつた。》《私が従前発表した作は随分多かつたが本集には未発表の作品で殆ど埋めた。既発表したものは私の気の向いたものだけとりおさめた。/先日上梓した「雪柳」は発表した作品を多くとつて又私の所謂民謡とは名づけられぬものであつた。それでそつと上梓して知人だけの間にお届けしたのである。それでこの「青い手帖」がほんたうの私の民謡集である。》(後がき)

《今度もいつも弱輩の私をいつくしんで下さつてゐる人たちの力をお借りした。学校の先輩であつたと言ふだけで横光利一さんは本集のために序文を下さつた。/装幀は濱邊萬吉さんに無理を願ひ発行の方は林さんに頼んだ。これらのよき先輩を持つた私は何と幸だらう。》(後がき)

横光利一は明治四十四年に三重県第三中学校(現・三重県立上野高等学校)に入学しているから、矢倉も同校卒業だということになる。ただし横光から「序文」をもらったのではなく、依頼とともに茶碗を贈呈したらしく、その礼状の文面をそのまま掲載している。

《冠省 旅行に出てゐましたので御礼出し遅れ失礼しました。お茶碗見事たいへん喜ばしく存じました。/序文を書くのは沢山溜つてゐてまだ義理を果してありませんのでなかなか書く閑がありません。》(下略)

旅行というのは横光の略年譜(羽鳥徹哉編)から考えると、昭和九年六月の越後湯沢行きではないだろうかと思われる。

濱邊萬吉は後に甲鳥書林の装幀(検印紙など)も多く手がけることになるが、検索してみるとこんな記述に出会った。元永定正は濱邊に絵を見てもらっていた。

《元永は1922年、三重県上野市(現・伊賀市)生まれ、三重県上野商業学校卒。卒業後一度大阪で就職するが、郷里に戻り、郵便局員、工員、店員など職を転々としながら漫画家を目指す。郷里の画家・濱邊萬吉に師事して油絵を始め、1952年、神戸市東灘区に転居し抽象的なオブジェや平面作品を作り始める。》(ART IT Official Blogs)

インタビューでも元永自身が濱邊についてこういうふうに発言している。

《元永:日展系です。絵はなかなか格調のある、良い絵描きやったと思います。日展に7回ほど連続入選とかいったら、昔は偉いことだったんですわ。三重県中に名前が鳴り響いとった偉い先生でしたね。》(元永定正オーラル・ヒストリー

『青い手帖』の巻頭に挿入された矢倉の肖像写真。二十代半ばであろう。

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矢倉の著書は『歌集坊やの夢』『青い手帖』と上述の『雪柳』だけらしいが、おそらく後年の随筆などを集めれば一冊の本になるのではないかと思う。例えば、先日紹介した『近現代のブックデザイン考 I 書物にとっての美』にも矢倉年の文章が引用されていた。甲鳥書林から昭和十六年に刊行された堀辰雄の『晩夏』などについて述べられた「堀さんの本づくり」(「新潮社版全七巻・堀辰雄全集月報第四号」)。

《書物を造るのに堀さんほどに判っきりと自分の好みを出された作家は又稀しい。
 それには堀好みという一貫したものがあって、それによって自身本づくりを楽しんだ人であった。
 そしてどの書物にも細かな注意が造本の上に払われている。私の経験の一つを言うと、行間に入れる約物(やくもの)のカットについていろいろ新しいものを物色したあげく、堀さんが自分で描かれたことがあった。『晩夏』という本の中のカットがそれである。》

あるいはまた『文学散歩』第十号(雪華社、一九六一年一〇月一日)に「洛陽の酒徒 吉井勇さんの印譜」が掲載されている。昭和三十五年の年末、故人となった吉井勇(十一月十九日歿)の夢を見て吉井勇の落款印を思い出す話。

《一日、長らく蔵つてあつた吉井さんの落款印をとり出してみた。》《数度にわたる転居のために大小のこれら印の中いくつかは肌にいさゝかの損欠を見せているものさえあった。/石印六、陶印四個とすべて十あつた。/印譜の中、下の四つが陶印である。/記憶をたどつてみると、十個の外にまだ譲られた印はあつたように思うのだが、箱の中には見当たらなかつた。》

《昭和二十年、すなわち終戦年の一月、私は吉井さんからそれまでに使用されていた落款印を一切合財もらいうけたのである。》

《当時の吉井さんは北白川から洛東岡崎円勝寺町に移つていた。それが又急遽越中八尾に戦時疎開することになつて、打合わせに赴いた私がこの時請いうけらものであつたーー。/さらに実情をいうなれば、いそがしく書債をすませている吉井さんの傍に、不要になつて無残に捨てられてあつたものである。/私には亡骸のように散らかされている印が、何か寂々と呼んででもいるかのように思われたーー。》

吉井勇の酒の飲みっぷりに触れつつ(石塚友二も登場)なかなか心に沁み入るいい回想である。全文引用したい誘惑にかれるが、少々長すぎる。

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研究ということで言えば、横光利一研究の副産物として甲鳥書林の矢倉、中市両名との関係がある程度浮かび上がっている。以前、某氏よりそれに關する資料を頂戴していたのを思い出して、今、読み直しているところ。また明日にでも。
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by sumus_co | 2013-01-02 21:07 | 古書日録
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