林蘊蓄斎の文画な日々
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欧米女見物

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道家斉一郎『欧米女見物』(一九二九年一二月一五日十版)を借覧中。初版は同年一二月五日である。内容については西出勇志「「ニッポン洋行御支度史」ガイドブック4」にうまく紹介されている。道家の武勇伝はどこまで本当か、少々怪しいところもなくはないにしても、臨場感あふれる描写には違いない。

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本書口絵よりハンブルグのダンスホールで美女に囲まれ満悦の道家斉一郎(1888-1942)。道家(どうけ)は経済学者。博士論文は「人口ノ経済的社会的研究」。本書にも柔道が得意なことが何度も出て来るが、大正六年、日立製作所に柔道場ができたとき最初の師範になっている(庶務係勤務)。その後、東京市統計課長となり、おそらくその関係で世界の都市調査に携わったのではないだろうか。その副産物、夜の都市調査が本書となって結実した。

専修大学第二代総長、第三代学長。衆議院議員(一九三七初当選)時局同志会。本書ではけっこうリベラルなことを書いているように思うのだが、日本精神を鼓舞した「道家イズム」で知られたというから分らないものだ。日本アマチュアボクシング連盟(全日本アマチュア拳闘連盟)第三代会長、日本カヌー協会初代会長(一九三八就任)も務めた。ざっと調べた著書は以下の通り。

[著書]
・震災ニ因ル日本ノ損失 東京市 一九二五
・新経済学 生産論 自彊館書店 一九二七
・新経済学 総論・生産論 自彊館書店 一九二七
・参考統計学 巌松堂書店 一九二八
・売春婦論考 売笑の沿革と現状 史誌出版社 一九二八
・世界三大経済ブロックと満豪の資源 一九三二
・財界の統計的観測 白鳳社 一九三二
・交通研究資料第41輯 戦争と交通機関, 交通盲目 日本交通協会 一九三六
・政党よ何処へ行く 政党罪悪史 講演通信391号 日本講演通信社 一九三八
・何故に斉藤隆夫君は懲罰に附せられたる乎 国民は正しく認識せよ! 森本耕 一九四〇
・配電管理と臨戦体制 富強日本協会 一九四一
・経済統計学 栗田書房 一九四二

[訳書]
ムンロー『欧米日本都市問題大系』上卷 白鳳社 一九三一

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見返しは上のような図柄。下は削除がはなはだしい頁。版そのものを後から削ったようだ。

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《[ロンドンの娼婦の数は]或る学者の説によると八万といひ或は三万位といふが、私の推算ではそれ程居るとは信じない。いくら多くとも二万人位だらう。これに次ぐのはパリーである。パリーには公娼だけでも七千近くから居る。或る学者は矢張り三万人の私娼が居ると述べているが私はロンドンと殆ど同数の二万人位と見てゐる。ベルリンもほゞ同数位であらう。公娼は約四千人である。日本の芸者は勿論体裁のよい私娼であるが、その数が東京市で一万二百五十六人ゐた(大正十五年)娼妓は吉原、新宿、洲崎、品川のいはゆる四宿で四千人以上居る。東京はさすがに世界第六位を占める大都会だけに如何なる方面にもひけを取らない。偉いものだ。》

こんな調子で、ざっくばらんな筆致が全編に踊る。感心なのは娼窟ばかりでなく古本屋もよく回ったらしいこと。シカゴ市の私娼撲滅運動の報告書を求めて《私はシカゴの古本屋を一軒残らず捜してみたが残念ながらとうとう手に入れることが出来なかつた》というくだりもあるし、下のような貴重なニューヨークの古本屋の写真も掲載されている(もう少し鮮明だったら!)。

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海外旅行記は概して面白い内容のものが少ないのだが、それでも、その時その場所でしか知り得ない事実が記録されていることもあり、そういう意味ではいずれも貴重であろう。

実は、かなり前に岡崎武志氏の書斎を見せてもらったとき、書棚の一角に戦前の海外旅行本がまとまって並んでいたのに興味を覚えたのが最初だった。安いものを見つけたら買っているという話だったと思う。それ以来当方も真似をして数百円までで出会えば、たいていは拾い上げることにしてきた。十年は経つはずだが、このくらいしか集まっていない。

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by sumus_co | 2012-12-29 22:00 | 古書日録
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