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二冊のちくま

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筑摩書房のPR雑誌『ちくま』を二冊入手した。一九七八年七月号と一九八〇年七月号。まるまる二年間のへだたりがあるが、ご覧のように号数は連続している。七八年七月号の編集長は吉岡実だった。吉岡実年譜〔改訂第2版〕(小林一郎 編纂)によれば一九七一年《一月、《ちくま》編集主任となり一九七八年七月の百十一号まで担当する。》とある。百十二号の編集者は柏原成光。

七八年に何が起こったか? 

六月《十二日、筑摩書房は東京地裁へ会社更生法適用を申請し事実上倒産、当時としては出版界最大の負債総額三十五億円、新聞を読むまで知らずにいる。友人知己から見舞の電話を受け残務整理に没頭。西脇順三郎を訪ね会社の状況報告となる。》(同前) 

急なことだったため百十一号には何の告知も載っていない。百十二号には「復刊にあたって」という短い文章が巻頭に置かれている。更生計画を裁判所に提出する運びになったので中断していた『ちくま』の復刊を決めた、伝統をうけつぎながら誌面の刷新を心がける、というような内容である。

百十一号は本文三十二頁、自社出版広告十六頁。執筆者は稲垣達郎、巖谷國士、渡辺一民、宮本輝、平井正穂、生島遼一、岡田隆彦、高橋新吉、海老沢立志、鼓直。本文カット=勝本冨士雄。

百十二号は本文三十二頁、自社出版広告八頁。表紙3に、福村出版、みすず書房、小沢書店、恒和出版の広告、表紙4にキリンのマインブロイの広告が掲載されている。執筆者は舟崎克彦、林竹二・高史明(対談)、小川環樹、上野昂志、黛弘道、常盤新平、宮尾登美子、堀田善衛、吉村昭。本文カット=難波淳郎。

善し悪しは別にして刷新という意図は前面に出ている。

吉岡の編集姿勢がうかがえるものとして『特装版現代詩読本吉岡実』(思潮社、一九九一年)に掲載されている討議(大岡信、入沢康夫、天沢退二郎、平出隆)にこういう発言がある。

《天沢 一時期筑摩書房の「ちくま」という小雑誌の編集を吉岡さんがされてましたが、編集者としてそこに集まってくる文章に対してひじょうに厳しい批評を持っていましたよね。
 大岡 そのことでぼくは彼に感謝していることがあって、『岡倉天心』という本を書く時に、書き出しが書けなくて困っている時、彼が何か「ちくま」に書いてよと言ってくれたんですね。そこに茨城県の五浦の天心の家へ行ってきたことを書いたのが、その本の序章になったんですが、その時に彼はその文章を激賞してくれた。ぼくはそれがとば口となって、本を書きはじめることができたんです。こちらが困っている時に端的に救いを入れてくれる人でもあったね。》

ひじょうに厳しい批評を持っていた証拠が百十一号の人選にも見えるような気がする。下は筑摩書房のデスクで仕事をする吉岡実、一九五五年頃。『特装版現代詩読本吉岡実』より。
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by sumus_co | 2012-11-07 21:19 | 古書日録
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