林蘊蓄斎の文画な日々
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南部支部報47号

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『南部支部報47号』(東京都古書籍商業協同組合南部支部、二〇一二年一〇月一九日、表紙写真=吉楽洋平、表紙デザイン=加納千尋)を某氏より頂戴した。組合員に配布されるもので一般には出回らないのだが、紹介してもよろしいというお許しを得た。

何と言っても表紙の斬新さが目を惹く。このお二人は今年の夏場に金沢のオヨヨ書林で「オヨヨの林で」と題して二人展を開催しておられるようだ。
http://www.facebook.com/events/186127454853419/

内容も古本好きにはとても興味深い。座談会「いままでの10年これからの10年」には豪華なメンバーが集まっている。佐藤真砂(古書日月堂)、江口宏志(ユトレヒト)、山路和広(フライングブックス)、森岡督行(森岡書店)。司会として二見彰(流浪堂)、大和田悠樹(東塔堂)、椛澤賢司(九蓬書店)。気になった発言を登場順にいくつか引用してみる。

佐藤《[現在の古本屋を取り巻く環境の激変について]メディアの歴史として考えればグーテンベルグから五百五十年、第一次産業革命から二百五十年、それぐらいのタームでしかやってこない一大転換期に居合わせているわけだから、これはもう楽しむしか手はないでしょう。》

森岡《[一誠堂に勤めていた]八年間はひたすら落丁を調べてました。毎日分らない本がどかーんとやってきて、僕にとってはとても楽しい作業だったし、良い経験になりました。》

山路《流通量は分らないけど、クオリティは確実に落ちてるし、さっき日月堂さんも言ったとおり古本屋に本を売らなくても自分で販売できるようになった。だからこれからの古本屋は何を誰に売るかっていう、編集力みたいなものが問われますよね。最近ヤフオク等では価格決定権すらお客さんに移ってしまったし。》

江口《[nomazon について]データベース化されているものは値段も下の方に流れてしまいますよね。いかにもそうなっていないものを扱うかと考えたときに、Amazon という巨大なデータベースは避けて通れないから、そこにないものだけを集めたらどんなことが見えるだろうかと、最初は遊びみたいに始めたんです。そうやって色々な本を紹介するのがとても面白くて、それが何百と溜まったときに、どうしてそれらは Amazon にないかと考えたら、例えばある地域だけでしか手に入らないものは、どんな場所からでも商品が購入できる Amazon の主義に反するし、値段のついてないものや限定数があるものも掲載しづらい。そういう本の作り方や売り方を探す作業が nomazon を形成するのだと気付いて、それを分りやすく見せていくウェブサイトを目指しています。》

山路《[アメリカの古本屋には]若手がいなくて大変だって言ってます。新しい古本屋が増えていて、職業的な人気もあるのは日本だけじゃないかな。アメリカに行くようになって十年ぐらい経つけど、新しくブックフェアに出るようになった古本屋は片手で足りるくらいだし、それもコレクターの延長のような元々お金持ちの人が大半だと思う。》

佐藤《[パリへ最初に行ったのは]二〇〇一年かな。向こうの本屋さんて「この分野、この筋には自信がある!」っていう核になるような部分を必ず持ってた。私にはそれがないと痛感しました。》《流行を追いかけるわけでもなく、みんな向いているところが違う。何だかとても羨ましかった。》

江口《だけどニューヨークも急速な勢いで本屋が減ってますよ。去年行ったところがなかったり、全品何十%オフとか、ここから先の商品は ebay 用だから触るなって怒られたり。》

佐藤《[データ化進展の結果]そうするとこれから先、何を商材にしたら良いのかって。もちろん、そうは言っても現物には動かしがたい魅力があって、その部分の見極めが大事なんだろうけど、あらゆるものは既にデータ化されている、或いはされるんだ、ということを前提にしていかないと……。》

森岡《[ビルの賃貸契約上、イベントが全部禁止になった]ギャラリーだけは許してもらったんですけど、不特定多数の人が来るのはダメ、飲食もダメになってしまって。移転するほどの予算はないし、また試行錯誤して新しい形を見つけないといけません。展示の場所としての本屋っていう需要はもっとあるのかなと思ってますが。》

二見《[店舗の展開について]まあ全部ひらめきでやってるからマニュアル化できないし、オレが二、三人いない限り無理かな。》

いろいろ考えさせられることがポンポンと出てきて面白い。個人的にはパリにも若い古本屋さんは多いと思うが、これを読むと日本の古本屋の未来は明るい気がする。

他には古書店主の有志が東京の町歩きをやっているそうで、その記録が掲載されているのも目を惹いた。そして巻末に坪内祐三「天誠書林 和久田誠男さんのこと」という追悼文。

《五反田の古書展で私は天誠さんの棚が一番楽しみだった。
 天誠さんの棚は良い意味で素人っぽさがあった。本(特に文学書)を愛していることがこちらにダイレクトに伝わってきた。
 だから天誠さんが抜けてしばらく、五反田の古書展は寂しかった。》
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by sumus_co | 2012-11-02 20:54 | 古書日録
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