庄司太一『原色日本壜圖鑑 第〇巻【はじめに】』(ボトルシヰアター、二〇一〇年五月二〇日)を頂戴した。
びん博士として知られる著者の壜との出会いが語られている。他の巻に関しては
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かれこれ十年近く前になるが、小さな壜を描いた絵をある方が購入してくださった。その方の知人にものすごいボトル・コレクターがいらっしゃると伺った。この図鑑を頂戴して奇しくもその尋常ならざるコレクターというのが庄司太一氏であることに気づいたのである。
氏はもともと図鑑フェチであったという。
《昔から私は「圖鑑」というものがこの上もなく好きであつた。まだ小學校にあがる以前に、實家に近い西武新宿線の下井草驛前に三眞書房(註五)といふ本屋があり、そのニスの匂ひのプン[繰返記号]する本棚の上に保育社の『ポケツト圖鑑』を見つけて、母親にさん[濁点付繰返記号]ねだつたことを覺えてゐる。ちやうど大人の手のひらほどのサイズで、低學年用のものであり、値段は百五十圓ほどであつたらうか、ねばつた末に『貝のいろいろ』と『昆蟲のいろいろ』の二冊を買つて貰ひ、寝るときはいつも枕許において寶物のやうにして眺めてゐたものであつた。》
そしてアメリカに渡り、初めてボトル・コレクションの世界を知ったという。
《日本においては個人的妄想でしかなかつたはずのびんの世界が、その地ではすでに二十世紀初頭頃から價値あるものとして認められ、各州にはガラスびんを愛好するボトル・クラブまであつて、びんに關する書物も多數出版されてゐることを知つたのである。》
小生もイギリスの田舎町にしばらく滞在していた頃、公会堂のような場所で毎週末に開かれる蚤の市を楽しみにしていのだが、そこでは古いビンを売っている人がたくさんいた。飲料壜はもとより薬壜、インク・ボトルや哺乳瓶など種類が多いのにも驚かされた。その町の本屋(WHSmithだったと思うが)ではボトルコレクターのための定期刊行物を売っていた。ちょっと信じがたかった。蚤の市では小さなインク壜を二三買っただけで終わって深入りはしなかったが、英国のボトル熱の高さはたしかに感じた(今調べると一九七〇年代に急速に高まったものらしい)。
日本に帰ってからも古いガラスものには魅せられてきた。コレクションということではなくもっぱら絵のモチーフとして買っている。下の右は薬壜。段ボール箱ひとつにホコリだらけの薬壜が詰め込まれていた。それが骨董屋さんの店の隅においてあった。たぶん買い取ったばかりだったのだろう。一箱まとめて譲ってもらった。そのなかにこれがあったのである。下の左はどこで入手したのか忘れてしまった。ボディの文字は「JUICE」ジュース。高さ14センチ。他にひょうたん形のニッキ水の瓶も持っている。