林蘊蓄斎の文画な日々
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近江屋商店 近江屋ホテル

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一九四一年の「近江屋商店 近江屋ホテル」のチラシである。主人は森野庄吉。検索すると、船の見送りテープを考案した人物としていろいろヒットする(出典は『海の慣習と伝説』杉浦昭典、舵社、一九八三年)。また次のような記事もあった。近江屋の名前の通り森野は滋賀県出身。

《父の庄吉は1890年代にカナダへ渡り、バンクーバーで2年ほど鉄道工員として働いた後にサンフランシスコへ移り、日本から移民してきた人達を相手に、船の着く桟橋あたりのサウス・パーク地区で簡易宿泊所を始めた。宿泊する日本人が増えてくると 土産屋を兼ねた大きな雑貨屋を隣接して『近江屋旅館』と、10室ほどのシャワー施設『びわ湖温泉』を開業した。近所には移民を多く出す福岡県、熊本県出身者が経営する旅館もでき、サウス・パーク地区は日本人街として発展した。》(「ジョージ森野」荒井一悦

このチラシには《米国桑港サター街千八百六番地=千八百八番地 日本人町真中 便利第一の場所 ブキヤナン街電車停留所前》という住所が明記されている。裏の地図で見ると、たしかに sutter street はダウンタウンの真中のようだ(中央折り目の右下すぐの四角く囲まれている辺り)。

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チラシに掲載されている文章は森野庄吉自身の懐古談である。具体的な内容は乏しいのだが、語り口が面白い。途中まで引用しておく。

《私が渡航した時は、明治三十二年の年シ、柳行李を、背中におうて日本にまだ缶詰が無かつた時代で右のカたニハ味噌桶ブラ下げ左の肩には支那カバン、御守袋を首にかけ、ミクジはん談祈りして、晩香波市を立ちのいて、鉄道ツトウテ段々と、働キ口をさがしたが、拾哩行くと其間には、一ケ所のセキシヨンあり、此セキシヨンといふ者は、六人ヅゝが一組で、鉄道の修繕をスル役ジヤ、ドコまで行テモ満員ダカラ、セキシヨンではことわられ、ギヤングで無ケレバ使うてくれぬ、其時トランプした時は、野にねたり、山にねたり、馬小屋のすみにねては、鉄砲ムケテおい出サレ、コトバ通じぬソレゆへに、火の用心をおそれてかドコの小屋にもねさしてくれず橋の下やら木の下にねました事は数シレズ、今とチゴウテ其頃は米や醤油あるジヤナシ、アザミの根をコボーとナシ、山からワラビを取つて来テ、塩バカリデベコンのダシデ、ダンゴ汁、わすれもせぬが其頃は、三十五斤の大俵が、六十五仙で買エマシタ天幕すまいで、鉄道工夫を、やりましたが、十一時間の働キデ、八十仙で有マシタ、まだ其上に、ナイトオークやオバタイムを一生ケンメに働いたが、喰物が悪いソレゆへに、みんなが、鳥目にナりましテ、英語がワカラぬそれゆへに、またもギヤングをほり出サレ、二十五仙の、フライパンと鮭の缶ガラ首に掛け、柳行李を背中におうて、マクラ喜ふんでだんだんと、ワシントン州早すぎて、シヤトル港から船にのり、花の加州へ、ヤツテ来テ、其時に金儲けは一番に何がよいかと聞いたナラいなかへ行テ墓守カ、金門湾の海のソコ、ダイナマイトで、岩を割ル、二弗取レルト言ふけれどあぶない仕事は私シヤいやジヤ熊本県や広島県の人たちと、パナマ運河を掘割に、行ウトきめた其時に、領事館カラもらツた証明まだ其頃は、印刷物が無い故に全部筆にて書イテある、今でもソレを持テ居ル、十年立テば、一むかし、今から思へば四昔以上年数の立ツのは早いもの、在米四十三年間、終始一貫槍通す》
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by sumus_co | 2012-08-05 20:32 | 古書日録
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