マンディアルグ『黒い美術館』(生田耕作訳、一九六八年一月二〇日、装幀=北園克衛)。マンディアルグを長い間「マンディアグル」と読んでいて、恥はかかなかったものの、おや? とある日気付いたときには、自らの節穴ぶりにあきれたものだ。先日の
カルモチンを「カルチモン」とずっと読み間違っていたのと双璧である(ただ、後者は
某氏も使っておられるようだし、検索してもけっこうヒットする。そう恥じ入ることもないかも?)。
この本は二冊目。同じ本を重ねて買うというのはあまりしないようにしているものの、この場合はシリーズのしおりが挿まれていたので、それに惹かれたのだった。「新しい世界の短編」スタート時のしおりは表紙のデザインを流用したもののようで、文字配りは北園克衛らしくない。
《体裁・判型=四六判フランス装》と明記してある。「フランス装」といっても表紙を木口側の一方だけ折り返したスタイル。それをこの時期には「フランス装」と呼んでいたことが分かる。
『筑摩書房出版通信』第一号(一九四三年八月)を某氏より頂戴した。昭和十八年というのだから粗末な用紙だが、書目には苦心もうかがえる。タテ167mm。
ついでに戦後(一九五五年一二月)の鱒書房の目録。挿絵は東郷青児。タテ13mm、ヨコ380mmという横長の用紙を四折りしてある。コバルト新書・グリーン新書・軽文学新書・女だけの本(殿方はご遠慮下さい)。いずれも軟派なタイトルが並ぶ。「女」がキーワード。石井好子「女ひとりの巴里ぐらし」、八木義徳「七つの女の部屋」、火野葦平「露地の女王」、永井龍男「女の靴」、柴田錬三郎「偽処女」、松本清張「悪魔にもとめる女」……。
カバー担当の画家名も付記してある。東郷青児、生沢朗、高野三三男、永田力、桂ユキ子、野間仁根、古沢岩美、硲伊之助、脇田和、荻須高徳、鶴岡政男、山本武夫、鳥海青児、斎藤三郎、沢田重隆、松田穣、高沢圭一、毛利かほる、阿部竜応、井上賢三、土井栄、須田寿、山口薫、石川滋彦、風間完、木ノ内文三、井指純一、三好悌吉。二科会、新制作協会、自由美術家協会、独立美術協会など在野の画家たちが多いようだ。