先日、まさに本のシネマ「チャリング・クロス街84番地」をしばらくぶりに見直した。ジョン・ダンの一節「人間は一巻の書である…」をアン・バンクロフトが読み上げるシーンでは「あ、芥川龍之介だ!」と思ったが、前に見たときにもそれが一番印象に残ったようでこんなブログを書いていた。もうろくの始まり。
All mankind is one volume
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《ニューヨークで暮らす女流作家ヘレーヌの趣味は、珍しい書籍の収集》…これはDVDのジャケットの内容説明。しかし、間違いだらけ。作家じゃなくて脚本家、珍しい書籍じゃなくて、彼女はイギリス文学を読みたかったのだが、NYでは豪華本しか売られていないため、新聞広告を見て直接ロンドンの古書店に注文をするのである。収集が趣味ではなく彼女は読書家なのである。珍しい本よりも良い編集や値段の安さを求めている。古書店との交渉を重ねるうちに少しずつ初版本などにも興味を示すのだが、それは彼女の興味の中心ではない。
イギリス人のお茶の淹れ方。お湯を注ぐときにケトルを火にかけたまま。
番頭のフランク(アンソニー・ホプキンス)が地方の町で開かれた古書市へ出掛けて(豪華な館で開かれている)、ヘレーヌの探している本を階段の踊り場に設けられた平台で見つける。
フランクの勤める古書店の外観。
ヘレーヌが友人夫妻のベビーシッターをしたとき。友人のアパートにて。本棚に陶器の犬の置物がある。どこかで見たような、そうだ、藤田嗣治が「私の部屋、アコーディオンのある静物」という作品に描いていた。これについても以前このブログに書いていた。
「私の部屋、アコーディオンのある静物」
http://sumus.exblog.jp/14047359
フランクがやはり他所の店の均一台でヘレーヌのための本を見つける。この粋な姿に見惚れた。映画としてはB級ながら、随所に本好きの心をくすぐるシーンが現れる。また、忘れたころに見直そう。