林蘊蓄斎の文画な日々
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青春図繪

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『青春図繪 河野鷹思初期作品集』(河野鷹思デザイン資料室、二〇〇〇年七月一四日、ブック・デザイン=太田徹也)。河野鷹思(1906年3月21日 - 1999年3月23日)の大正十二年から昭和三十年までの作品を網羅して圧巻。伝記的記載(川畑直道)もかなり突っ込んだ内容で読み応えがある。

河野は東京美術学校を卒業して松竹キネマへ入った。サイレント映画の黄金期。松竹蒲田撮影所で一九二九年に製作された映画は七十五本、三〇年七十六本、三一年八十四本、三二年七十本という信じがたい数である。河野はそこで予告ポスターや折り込み広告をデザインした。一九三五年の退社までの約五年間に手がけたデザイン総数は二千点近くにおよぶという。

《当時の映画広告(ポスター、新聞広告、雑誌広告など)のデザイン表現は、俗に"大正調"と呼ばれる様式が主流を占めていた。
 この"大正調"とは、図案文字(描き文字、レタリング)を中心とした重厚で装飾的な表現様式のことで、その代表格が、一九二三年五月、大阪・道頓堀に開場した洋画封切館・松竹座の広告活動であった。
 この松竹座の広告表現上の特徴を一言で言えば、ウィーン分離派やアール・デコといった欧米の近代的な装飾様式をいち早く導入した点である。》

キネマ文字というやつである。山田伸吉が創案したと言われたりするが、そうではないらしい。河野はその次の時代を作ったことになる。面白いのは山田が松竹座宣伝部から楽劇部の美術部に移籍したのが一九二九年で、これは河野が松竹キネマ宣伝部へ入社した年だということ。

ちょうど蒲田撮影所の所長・城戸四郎がロシア、ヨーロッパ、アメリカを視察して帰国した。そのときに持ち帰った宣伝資料から河野は大きな刺激を受けた。

《ポスターの分野でも、アレクサンドル・ロトチェンコや、ゲオルギーとウラジミールのステンベルク兄弟が、デザイン史に残る演劇・映画のポスターをたて続けに発表して、その動向が世界中から注目された。
 そうした最先端のデザイン見本が、レジスタンスを目論む河野に、突然もたらされたのである。
 河野は築地小劇場時代に師匠の吉田謙吉から、ロシア・アヴァンギャルドの間接的な啓示を受けていたが、やはり実物から学ぶことは多かった。》

要するに、分離派(セセッション)からロシア・アヴァンギャルドに潮目が変った、そういうことである。日本のデザインはいつもそういうことである。しかしそれを消化して自己流にしてしまうのが、夢二の例だけでなく、河野の場合にも当てはまるのだろうと思う。

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牛原虚彦監督「若者よなぜ泣くか」(松竹キネマ、一九三〇年)
http://sumus.exblog.jp/13781799/ 

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対外宣伝雑誌『NIPPON』(日本工房、一九三四年一〇月創刊)には一九三九年から関わった。

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一号だけで終わったとされる対米宣伝雑誌『VAN』創刊号(日本写真工藝社、一九四〇年一二月、表紙デザイン=高橋錦吉、写真=田村茂)、この編集長を河野は務めた。「VAN」とは「先陣、前衛、先駆」などの意味だという。

面白いのは敗戦後ジャワ(ジャワ時代の活動も検証されているが、非常に興味深い)から戻った河野は諷刺雑誌『VAN』(イヴニングスター社)の第五号からその編集に参加している。対米宣伝雑誌と同じ名前。この「VAN」は「先駆」とは別に「荷車」という意味も重ねられているようだ。さらに付け加えれば、石津謙介の始めたアイビー・ルックの「VAN」は諷刺雑誌『VAN』から来ている。石津の兄の友人だった伊藤逸平が編集長をしていたのである。

ブログ内検索をしてみると、これまでに河野鷹思の装幀本を二冊紹介していた。

『シリーズ商店建築デザイン選書1話題の喫茶店』(商店建築社、一九七〇年)
http://sumus.exblog.jp/13308251/ 

『バンビ・ブック ジュニア工作なんでも号』(朝日新聞社、一九五七年)
http://sumus.exblog.jp/8127479/ 
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by sumus_co | 2012-04-22 20:40 | 古書日録
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