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悪戯の愉しみ

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数日の旅中、どんな本を鞄にしのばせるか、これにはいつも悩む。とりあえずは読書継続中の『スワン家のほうへII』(高遠弘美訳、光文社古典新訳文庫、二〇一一年)を入れた。はっきり言って第一巻よりぐっと面白くない(翻訳の如何によるものではないので誤解なきよう)。スワンの恋の葛藤が縷々叙述されるのだが第一巻のメリハリはほとんどなく饒舌ぶりが、あるいはプルーストの人間関係についての微細な観察ぶりとでも言うべきなのだろうが、遺憾なく発揮される。されど退屈なものは退屈である。しかしこれは険しい峠だと思って踏破を目指す。食べ物とか、風俗的なことをメモしながら。慌てる必要はまったくない。

プルーストは文庫ながら少々分厚い。もう少し薄くて上着のポケットにねじ込める一冊を探した。あれこれ目移りしていてふと手に取ったのがアルフォンス・アレー『悪戯の愉しみ』(山田稔訳、福武文庫、一九八七年、装丁=菊地信義、カバー写真=瀬尾明男)。山田訳ということで買っておいたが、まったく読んでいなかった。短編が四十八収められている。これならちょっとした待ち時間に手軽に読めるというもの。

読み始めると、いきなり「親切な恋人」がまったくもって奇妙な物語。ローラン・トポールのサドマゾ漫画を連想させる。トポールよりもややロマンチックかもしれないが。二番目の「夏の愉しみ」が真っ黒けのけのブラックで痛快。後で解説を読んでみるとアンドレ・ブルトンがこの「夏の愉しみ」を『黒いユーモア傑作集 L'Anthologie de l'humour noir』(Sagittaire,1940)に選んだことで忘れ去られていたユーモア作家アルフォンス・アレー(Alphones Allais 1854-1905)が蘇ったという。さもありなん。とは思ったものの、たくさん読むとつまらない。駄洒落(実際にはダジャレばかりだそうだが、日本語に翻訳できなのでそういうものは極力省いたという)やナンセンスも過ぎたるはなんとやら。

山田稔さんは『特別な一日』(編集工房ノア、二〇〇八年一月一四日、初出は『VIKING』)に収められた「ある難船の記録」で、いかにしてアレーを翻訳し出版するに至ったか、あるいはアレーの生まれ故郷オンフルールまで出かけたときの様子などについて回想をしておられる。

初め『VIKING』に訳出していたものを出帆社という出版社が一九七五年に『悪戯の愉しみ』として単行本にしたけれども、すぐに倒産してしまい、増刷分の印税が払われなかった云々。出帆社は取締役が矢牧一宏、内藤三津子で、福田博人が実質取り仕切っていたらしい。その後、出帆新社という出帆社と関係ないといいながらその継承をしている出版社から出版の打診があったが、結局出版はされなかった。そして上記の福武文庫に収められ、さらに二〇〇五年にみすず書房から新版が出た。たしかにユニークな作者ではあるので、出してみたくなる気持ちは分かる。

山田稔訳『悪戯の愉しみ』出帆社版(1975年11月)
http://bookbookbookish.blog.eonet.jp/default/2012/04/post-76ba.html 

ところで別に自慢するわけではないけれども、山田さんの「ある難船の記録」には触れられていないアレー本を架蔵しているのだ。
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『PLAISIR D'ÉTÉ(夏のたのしみ)』(山田稔編、芸林書房、一九七〇年一〇月一日二版、初版は一九六九年二月一〇日、装丁=新井深)。六編の原文を収録。丁寧な註を山田さんが執筆し、巻末に短い解説が加えられている。フランス語の教科書としてのナンセンス・コント集にはもってこいであろう。

さて、アレーと同時に『スワン家のほうへII』ものろのろと読み進めていたところこんな一節に出くわした。

《スワンにではなく、男たちに向けられた眼差しと快活さは、何らかの官能的な喜びを表現しているかのようだ。その喜びをオデットはその場かあるいは他の場所(おそらくは、そこにゆくのではないかとスワンが心配している「支離滅裂派の舞踏会」など)で味わうだろうが、スワンにとっては、それがどんなものか想像もつかないだけに、彼女がほかの男と寝ること以上に嫉妬を感じることになった。》

「支離滅裂派の舞踏会」にこういう註が付いている。

《一八八二年、ジャーナリストのジュール・レヴィが始めた反アカデミズム、反ブルジョワの藝術運動。アルフォンス・アレーやトゥールーズ・ロートレックらが参加した。美術展や突飛な仮装舞踏会などは一世を風靡した。》

ジュール・レヴィ(Jules Lévy 1857-1935)は一八八二年に「水治療医 Hydropathes」(一八七八年結成)というユーモア集団を新しく「支離滅裂 Incohérents」へと発展させた。その趣旨は世紀末でペシミスティックになっているフランス人たちを笑わせよう! というものだったそうだ。とくにその奇抜なファッションを競った舞踏会(les bals des incohérents)が有名で最初は一八八五年三月に開かれた。

それからこういう会話もある。

《『黒猫亭』じゃ、彼女、たくさん知り合いがいただろうね。》

キャバレー「黒猫亭(シャ・ノワール)」(一八八一年創業)は『黒猫 Le Chat noir』という雑誌も発行しており(今でもときおり古書目録に出ている)、その雑誌に参加して有名になったのが他ならぬアレーだった(最初の署名記事は一八八三年だそうだ)。上述のようなコントを次々と執筆しては大受けに受けていた。八六年には第二期『黒猫』の編集長にもなっている。フェルメールについての論文執筆を準備している恋するスワン氏がそんなところへ恋人を行かせたがらないのも無理はないだろう。

以上たまたま選んだ二冊の内容が少しばかりシンクロしたというお話。
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by sumus_co | 2012-04-16 20:38 | 古書日録
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