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昭和文学への証言

昭和文学への証言_b0081843_2024020.jpg

大岡昇平『昭和文学への証言』(文藝春秋、一九六九年、装幀=北園克衛)。昨日の青山二郎からの連想で目についた。拾い読みしていると、やはり面白いことがいろいろと書かれている。「「私小説論」をめぐって」と題した一文に芝書店が登場する。

《昭和九年「悲劇の哲学」を出版した芝書店の元店主芝隆一さんが最近家へ来て、いろいろ当時の思い出話をして行った。芝さんは本来は目黒の河上徹太郎の家の近くの古本屋さんで、河上が小遣銭をつくりに本を売りに行って、顔見知りになったのである。前から季刊「小説」の世話をしていたが、河上の処女論文集「自然と純粋」(昭和七年)を出したのが、単行本の処女出版となったわけだった。》

『自然と純粋』は青山二郎の装幀。河上訳シェストフ『悲劇の哲学』は当時としては異例の《全体で八千ぐらい》刷った。

《しかし芝書店のような手工業的小出版社にとっては、文字通り目を廻すような事件だったので、結局はシェストフのために書店の規模がふくれ上がり、人件費もかさんで、二年後にはつぶれることになったのである。
 平野謙は小林秀雄と河上徹太郎が、芝書店、文圃堂、創元社などを「喰い潰した」と書いているが、少なくとも芝書店に関する限り、その事実はない。芝さんは昭和十年から「生活」という雑誌を始めたが、これには河上などはタッチしていない。主な執筆者は本田喜代治、内山健など、「唯物論研究会」その他一種の転向グループである。本田喜代治などははっきり「文學界」に対抗意識を出して論文を書いている。当時は本や雑誌に左翼が入って来るときまってその本屋は潰れてしまったもので、芝書店も例外ではなかったわけである。》

芝書店の単行本を見るとたしかに昭和十一年かぎりで戦前の刊行は終わっている。ただし左翼色はそう強いとは言えないだろう。それよりも牧野信一や吉田健一によるポオの翻訳、河上訳のヴェルレエヌ、他にもヴァレリイ、ベルグソン、保田与重郎の『日本の橋』まで出しているのはどうなのかな。もちろん牧野の創作集『鬼涙村』(一九三六年)は特筆すべきと思うが。左翼というよりもそちらの方に罪が重いかもしれない。大岡自身もこう書いている。

《私はスタンダール「アンリ・ブリュラール伝」を訳す予定で、古本の現物給付だったが、前借りもした。そして原稿ができないうちに、芝書店は潰れたので、私はその時黒字計算になっていた唯一人の執筆者になった。》

晩年の芝隆一
http://sumus.exblog.jp/7492948/

『生活』(芝書店、一九三六年五月一日)
http://sumus.exblog.jp/9836528/

「わが師わが友」には青山二郎のことが詳しく出ている。が、今これは省略して、昨日も登場した三好達治のところをちょいとつまんでおく。

《中原でも同じことだが、詩人というものには、小説家とちがって、必ず無条件の崇拝者がつくものである。
 中原の崇拝者は青山の表現をかりると「上野のチンピラにヒロポンを打って、チャリンコに仕立てたような」のが多かったが、三好さんの乾分には一本立ちの学者が多いのが特徴である。》

《佐藤正彰は京都学派ではないが、三好達治に献身的な愛情を捧げている一人である。》《桑原、生島、佐藤と並べて、三好達治門下の三羽烏としては御当人は不服かも知れないが、僕の眼に映ずるところでそうである。みんなお坊ちゃんの理屈屋で、三好さんの詩人の我儘の寛容に、あったまっていたのである。》

この大岡の発言には納得した。淀野隆三がまさに三好崇拝者である(以前にも紹介したように三好は淀野の長女の名付け親である)。そして井上究一郎もまた詩の方面の弟子であった。
by sumus_co | 2012-03-02 21:13 | 古書日録
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