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内山書店

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陳祖恩『上海に生きた日本人 幕末から敗戦まで』(大里浩秋監訳、大修館書店、二〇一〇年七月一〇日)を借覧していると、内山書店のことが出ていた。その記述を要約しておく。

内山完造は一九一三年三月に参天堂の社員として上海に渡った。一九一六年一月、京都で美喜子と結婚、三月に上海に戻り、一七年に北四川路魏盛里一六九号に内山書店を開店、美喜子の名義で経営した。下の写真が北四川路の内山書店と店員たち。当時、上海にはすでに日本堂、申江堂、至誠堂など三店の日本の本屋があったが、キリスト教関連の書籍を扱っていたのは内山書店だけだった。一九二〇年代にキリスト教以外の書籍も扱うようになり、円本を大量に販売して一気に売り上げを伸ばした。
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一九二九年、施高塔路一一号に移転。翌年、参天堂を退職。四川路五二号に支店を開いた(〜三三)。築添さんの魯迅をかくまったという記述に対応するのはこの部分だろうか。

《内山書店が店を構えた虹口地区は越界築路区域[租界の境界を越えて工部局が不法に占領した道路または地域]であり、名義上は共同租界であったが、実際には日本人の統治に帰しており、国民党政権下の警察は同地域を巡回することはできなかった。このため内山書店は日中文化人の理想的な談話の場所となった。》

一九二六年一月、谷崎潤一郎が内山書店を訪問した。内山の斡旋で谷崎は日中文化人らと顔合わせの会合をもった。さらに歓迎会も開かれた。後には佐藤春夫、金子光晴らも谷崎に内山を紹介されて立ち寄った。
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一九二七年一〇月、魯迅は内山と知り合い文芸漫談会の常連となった。そのとき初めて本を購入してから一九三六年に歿するまでに書店を五百回以上訪れ、千冊もの書籍を購入した。しだいに内山は魯迅の接客や手紙の窓口のようになった。

一九三七年第二次上海事変の後、内山夫妻は帰国し、翌年長崎で内山書店を開いた。四一年初、夫妻は再び上海に戻る。日本軍の命令により中美図書公司を接収し内山書店有限公司とした。妻美喜子は四五年初に病歿。静安寺外国人墓地に埋葬した。一〇月、国民政府は内山書店にあった二万冊の図書を接収した。

《この時の内山はなお骨を上海に埋めるつもりでおり、日本人が帰国する際に手放す書籍を次々と買い入れ「一閑書屋」の名で古本屋を開いた。一九四七(昭和二二)年一二月六日、国民政府は「国民党政府転覆団員」という根拠のない罪を内山に被せ、強制帰国を命じた。》

おおよそはこうことであるが、記述が微妙に違う略歴が下記にあるので参照されたし。

日中友好の歴史とともに---内山書店

絵葉書は小生蔵のもの。以前にも「上海呉淞路の至誠堂書店」で三枚ほど出しているが、同じコレクション。上から「上海 共同公園ヨリ郵便桟橋ヲ望ム」、「虹口市場前の殷賑」、「上海銀座大馬路」。

上海の日本人は「会社派」と「土着派」に分けられたという。会社派は共同租界かフランス租界などに住み(「上海銀座大馬路」はそちらの方面)、土着派は中小企業や商店主たちを指し、呉淞路を中心とした虹口地区に集中していたそうだ。昭和二年に一九九七世帯七五八二人の日本人が呉淞路一帯に住んでおり、上海の日本人総数の三分の一に近かった。

絵葉書二枚目がその日本人街にあった大マーケットである。中国人には「三角地菜場」、日本人には「虹口マーケット」と呼ばれていた。内地(日本)にあるものでないものはなかったという。この図のような三階建になったのは大正十二年だそうだ。

戦後もこの市場は上海で最大のマーケットとして繁栄したが、一九九七年に取り壊されて現在は三角地ビルが建っているという。それにしてもこの『上海に生きた日本人 幕末から敗戦まで』、じつに興味深い一冊である。

そうそう先日の『吶喊』の初版の書影が出ているサイトを見つけた。ひええ……

魯迅 吶喊 上海北新書局 烏合叢書一 [1926]
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by sumus_co | 2012-02-13 20:53 | 古書日録
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